2023年のカンファレンス・シーンを振り返る
Here’s a short recap of where and what we discussed
カンファレンスは、いつも刺激に溢れています。2023年も多数のカンファレンスを通じて、パネルディスカッションやプレゼンテーションの機会に恵まれました。自らのプレゼンテーションを通じて過去のリサーチ成果を発信するだけでなく、カンファレンス・チェアやパネル・モデレータの役割は、業界ソートリーダーとのインプロビゼーションであり、将来のリサーチトピックスやインサイトテーマを仕込む貴重な瞬間です。様々なかたちで人が出会い、意見を交換し、議論を深める。そのための準備と当日の緊張感は、アナリストの責務であり、醍醐味でもあります。
ポストパンデミックの今日、カンファレンス・シーンはハイブリッド(オンラインと会場参加型の併用)が常態となりました。ウェビナー形式の業界団体やメディア、ベンダー主催のイベントもすっかり定着し、今年も、セレントのイノベーション&インサイト(I&I)ウィークはデジタルフォーマットで実施しました。こうしたカンファレンスのデジタルトランスフォーメーション(DX化)は、Webスクリーンを通じた不特定多数の人的交流を日常化するとともに、オンデマンドでのデジタルコンテンツの流通を加速しています。また、会場参加型のイベントでは多くの業界関係者様との絆を一層深め、リアルのパワーを痛感しました。
年頭に際して、2023年のカンファレンスとウェビナーを振り返ります。銀行、保険、証券、ウェルスマネジメント、そしてリスクマネジメントの各業界の議論に共通したキーワードは、顧客経験、自動化、生成AI、基盤の現代化、そしてイノベーションの継続でした。
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IBA JAPAN ウェビナー: テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム|2023/1/31
2023年のカンファレンスは、資本市場の議論で開始しました。国際銀行協会の主催するウェビナーで基調講演を提供し、東京市場のソートリーダーとともに、プラットフォーム技術戦略に関するパネルディスカッションのモデレーターも務めました。
一般社団法人国際銀行協会(IBA Japan)は、日本国内で活動する外資系銀行、証券会社、駐在員事務所が加盟する業界団体で、国際的な金融機関の意見を代表しています。また、IBA Japanは、会員向けに意見交換の場を提供するフォーラムの役割を果たし様々なサービスを提供しています。
基調講演では、セレントが実施した最新調査「セレントサーベイ:テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム」の結果を報告し、難局を克服しポストパンデミックの資本市場を切り開く日本の市場参加者の取り組みを議論しました。
トリレンマ(「制度改正」、「顧客ニーズの進化」、「収益を上回るコスト上昇」)に直面する市場で、市場参加者は、フロントオフィスからバックオフィスまで、経済性と効率性を追求しています。市場での「マーケット・アルファ」が見出しがたい今日、それはオペレーションの合理化と統合、最新の投資意思決定テクノロジープラットフォームへの投資による、「オペレーショナル・アルファ」の獲得を巡る取り組みと言えるでしょう。
トリレンマを解消し、クラウド3.0への移行を円滑にし、ハイブリッド・アウトソーシングとマネージドサービスの新しい組み合わせを実現するために、セレントは、以下の3つの具体的な打ち手を提唱しました。
- エンド・ツー・エンドなプロセス革新
- データドリブンな組織と意思決定の実現
- 変化に強い体質を目指す、アーキテクチャとソーシングモデルの革新
関連するセレントレポート:
「テクノロジーが革新する資本市場プラットフォーム:日本市場の変化をビジネスチャンスにする仕組みづくり」
テクノロジートレンド・プレバイザリー: 日本語ウェビナーシリーズ|2023/1/23~3/13
本レポート及びウェビナーは、2023年に向けた金融ビジネスの主要テーマと金融テクノロジーの優先課題について、セレントアナリストによるガイダンスと対応策の議論です。この新レポートシリーズ「プレバイザリー(Previsory: Pre-viewとAd-visoryを組み合わせた造語)シリーズ」ではその要諦を日本語で解説しました。
2023年、このリサーチの共通のテーマは「顧客関係の深化を通じてマクロ経済ベースのストレスに対処する」。世界中の市場は地政学および経済の潮流がもたらすショックにさらされました。サプライチェーンの停滞、インフレの加速、金利上昇が進むなか、事業規模にかかわらずあらゆる企業がこの先に待ち受ける困難に直面しています。消費者も企業も、そうした荒波を乗り越えるための信頼できるアドバイザーとしてこれまで以上に金融機関への期待を強める一方、より慎重なアプローチでその関係構築を図っています。市場の不確実性が高まる中で業界の競争はますます激化する見通しです。金融機関にとっては、顧客サポートを深化しつつ、いかに差別化されたIT投資を行うかがカギと言えます。
オンデマンドでの視聴はこちらから:
- Part 1. キャピタルマーケッツ https://www.celent.com/ja/insights/744475434
- Part 2. ウェルスマネジメント https://www.celent.com/ja/insights/923291149
- Part 3. リスクマネジメント https://www.celent.com/ja/insights/872476806
- Part 4. コーポレートバンキング https://www.celent.com/ja/insights/984821181
- Part 5. リテールバンキング https://www.celent.com/ja/insights/404635064
- Part 6. 生命保険 https://www.celent.com/ja/insights/891696298
- Part 7. 医療保険 https://www.celent.com/ja/insights/720054205
- Part 8. 損害保険 https://www.celent.com/ja/insights/753382895
モデルアワードプログラム2023: 創発企業への道|2023/4/11~7/18
2023年、セレントの「イノベーション&インサイト(I&I)」イベントは17年目を迎えました。
このイベントは、「モデルアワードプログラム」を通じて銀行、保険、ウェルスマネジメント、キャピタルマーケッツ、リスク & コンプライアンスなど、金融サービスにおける優れたテクノロジー活用事例を発掘、表彰するものです。
2023年は3月29日にバーチャルサミットを開催し、ライブプレゼンテーション、モデルアワード受賞プロジェクトの発表、受賞者のケーススタディビデオ、ファイアーサイドチャット、ブレイクアウトセッションなどを実施しました。I&I Week 2022を成功に導いたのは、アワードプログラムへの応募者、受賞者、イベントスポンサー、プレゼンター、そしてイベントにご参加いただいた皆様です。
イベント終了後も、イノベーション&インサイト・ウィークのプラットフォーム「ハブページ」を通じて、多数のデジタルコンテンツを公開しました。このウェビナーシリーズはその日本語でのサマリーと解説です。インタビューやライブセッションのリプレイ、アワード受賞者の革新的な導入事例を紹介したビデオ、ケーススタディレポートへのリンクなどをご紹介しました。
プログラム概要と業界動向、受賞企業の取り組みは、こちらのページから日本語ウェビナーで視聴下さい。
- 基調講演 ―繁栄へのギアチェンジ「エマージェント・エンタープライズ(新たな企業体:創発企業)の構築」
- モデルアワードプログラムを振り返る:PART 1 ―証券市場とリスク管理【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
- モデルアワードプログラムを振り返る:PART 2 ―銀行市場【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
- モデルアワードプログラムを振り返る:PART 3 ―保険市場【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
- モデルバイサイド2023 | ニッセイアセットマネジメントー企業年金のデジタルエンゲージメントを活性化【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
- モデルセルサイド2023 | SOCIETE GENERALEー資産としてのデータ【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
- モデルウェルスマネジャー2023 | MERRILLー選好に基づくアドバイザーマッチング【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
- モデルバンク・オブ・ザ・イヤー2023 | ICICI BANKー「カード顧客サポート」と「貿易サービス」におけるイノベーション【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
- モデルインシュアラー・オブ・ザ・イヤー2023 | MAX LIFEーデータとAIを活用する生命保険会社【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
- モデルリスクマネジャー・オブ・ザ・イヤー2023 | HSBCー金融犯罪を大規模に検出するクラウドベースのAMLソリューション【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
TFITS2023: 東京金融情報/ テクノロジーサミット|2023/6/28
東京金融情報&技術サミットは、金融機関のIT、データおよび営業担当エグゼクティブが一堂に会する、日本では唯一のイベントです。セレントは今年も、主催者WatersTechnology社のナレッジパートナーとして、会議アジェンダの設定、パネルディスカッションの運営などのコンテンツサポートをしました。
2023年の本カンファレンスは会場参加型のイベントで開催、多くの業界関係者の皆様との絆を深めました。アジェンダは以下の重要テーマを含み、ITおよびデータ管理を担当するエグゼクティブ、ソートリーダーをパネリストに迎え、データとテクノロジーが革新する日本の金融業界の未来を議論しました。
- キーノートパネル:テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム
- テクノロジーパネル:DXの加速ために、テクノロジーをリデザインする
- 今後のコミュニケーションに関するコンプライアンス
- ESGパネル:投資戦略と意思決定を変えるESGの本質
- ポストトレードパネル:ポストトレードサービスの未来―プロセスを簡素化する新しいテクノロジーとは?
- 高頻度取引(HFT)に対応したローレイテンシー・インフラの構築と最適化
- ディスクロージャーのハイライト:新世界におけるセキュリティとプライバシーの未来
セレントは基調講演に加えて、パネルディスカッションにおけるモデレーターを務めました。
パネルの概要はこちらから:
- Part 1 | キーノートパネル:テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム
- Part 2 | ポストトレードパネル:ポストトレードサービスの未来―プロセスを簡素化する新しいテクノロジーとは?
オラクル主催「金融イノベーションエクスチェンジ - 東京」|2023/8/29
Oracle Financial Servicesが主催した本セミナーでは、コーポレート・バンキングとリテール・バンキングの両分野において第一線で活躍する金融機関、アナリスト等の様々なスピーカーと共に、ビジネススピードを加速させ、イノベーションを促進し、カスタマー・エクスペリエンスを革新するための戦略について、議論しました。設定された議題には、ポストパンデミックの銀行業界を取り巻く優先度の高いイニシアチブが含まれました。
- 顧客を中心に、新しいチャネルやオープン・エコシステム、最新のプラットフォームに迅速に適応する方法
- チャネルを通じて収益を拡大し、デジタルを起点に顧客を迅速に獲得するには?
- 顧客中心のイノベーションと勘定系システムのモダナイゼーションの両立を目指す取り組み
- 業務効率化、スピード感のあるイノベーション、急速なビジネスモデルの変革によるリスクを軽減するためのクラウド戦略
- コーポレートバンキングにおけるデジタル化を加速する機会とテクノロジー活用とは?
- 顧客の運転資本管理を改善し、仮想口座で複雑なグローバル口座の構造を管理する方法
- クロスボーダー、インスタント・ペイメント、ISO20022への移行に関する戦略示唆
セレントは、以下の基調講演を提供しました。
- 基調講演のタイトル:「テクノロジーが革新するバンキングの未来―邦銀が議論すべき世界の潮流とその含意」
- 基調講演のアジェンダ:
- 経済環境と銀行セクターの対応
- リテールバンキングの動向:5つの優先事項と事例、Deep dive: データマネタイゼーション
- コーポレートバンキングの動向:5つの優先事項と事例、Deep dive: ISO20022
- クラウドとAI:未来へのテクノロジーの今
- 邦銀への示唆:バンキングの未来に向けて
日鉄ソリューションズ + SIMCORP 共催「資本市場参加者向けイベント」|2023/9/14
日鉄ソリューションズ(NSSOL)は、資産運用管理ソリューションプロバイダーであるSimCorpと共催で、国内金融機関、資産運用会社に向けて「資本市場テクノロジーイベント」を開催しました。両社は同日、新たなパートナーシップ契約を締結、国内金融機関に向け、資産運用管理ソリューションの導入を支援する旨発表しました。
グローバル資本市場、中でも資産運用業界は地政学リスク、インフレ抑制、グローバルサプライチェーンの再構築などの変化を受けて急速に複雑化しています。変化に適応して持続可能なビジネスモデルを構築するためには、組織を変革して付加価値の高い作業に集中し、効率的な運用を行っていく必要があります。日本の資産運用業界は、そのようなグローバルな変化の影響への対応に加えて、今後予想される金利上昇、ESGやオルタナティブといった運用対象の多様化、日本独自のビジネス慣行の是正などへの対応が必須です。このイベントにおいてセレントは、基調講演を提供し、パネルディスカッションのモデレーターを務めました。
基調講演において、セレントはグローバル資本市場における最重要な5つのテクノロジーアンカー(ESG, デジタルアセット、UI/UX、データ活用、規制対応)を解説し、そこでのベストプラクティスを紹介しました。加えて、ポストパンデミックの日本の市場参加者の取り組みと優先事項を議論しました。最後に、日本の市場参加者に向けて、「市場で勝つためのイノベーション戦略」を提唱しました。
- 基調講演のタイトル:「資本市場の最新動向と市場で勝つためのイノベーション戦略とは?」
- 基調講演のアジェンダ:
- 資本市場の5つのアンカー
- バイサイド・テクノロジーのハイライトと優先事項
- 市場参加者の対応:日本市場でのサーベイ結果から
- 推奨:市場で勝つためのイノベーション戦略
また、パネルディスカッションにおいては、日本とAPACの資本市場を代表するソートリーダーと共に、バイサイド・テクノロジーにフォーカスした議論をしました。ESGスコア、サステナブル投資、GXグリーントランスフォーメーション、人的資本経営など、バイサイドテーマにおけるデータとアナリティクスの活用、特に、データ指標とインフラの標準化、そこでのテクノロジー活用について、資産運用業界に共通する課題と取り組みを議論しました。
- パネルタイトル:「バイサイドパネル:キャピタルマーケッツにおけるテクノロジー利用の実際―市場で勝つために何を残し、何を変えるか?」
- パネルアジェンダ:
- ビジネス上の最優先事項と取り組み:ビジネスを革新するテクノロジードライバーは何か?
- テクノロジー利用における課題と取り組み:バイサイドテーマ#1. クラウド利用、#2. エンド・ツー・エンド(プロセス改善とデータ活用)における課題と取り組みは?
- ソーシングモデル革新に向けて:バイサイドテーマ#3. ソーシングモデル(テクノロジーの調達と運用・保守体制)の現代化にむけて、そのあるべき姿とベンダーへの期待は?