ポストトレードサービスの未来―プロセスを簡素化する新しいテクノロジーとは?
東京金融情報/ テクノロジーサミットを振り返り:Part 2
東京金融情報/ テクノロジーサミットは、金融機関のIT、データおよび営業担当エグゼクティブが一堂に会する、日本では唯一のイベントである。本年の会議アジェンダは以下の重要テーマを含み、ITおよびデータ管理を担当するエグゼクティブ、ソートリーダーをパネリストに迎え、データとテクノロジーが革新する日本の金融業界の未来を議論した。
- 基調講演:資本市場のエコシステムを成長ドライバーに ― 日本市場の繁栄に向けて
- キーノートパネル:テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム
- テクノロジーパネル:DXの加速ために、テクノロジーをリデザインする
- 今後のコミュニケーションに関するコンプライアンス
- ESGパネル:投資戦略と意思決定を変えるESGの本質
- ポストトレードパネル:ポストトレードサービスの未来―プロセスを簡素化する新しいテクノロジーとは?
- 高頻度取引(HFT)に対応したローレイテンシー・インフラの構築と最適化
- ディスクロージャーのハイライト:新世界におけるセキュリティとプライバシーの未来
セレントは、2つのパネルディスカッションにおいてモデレーターを務めた。
ポストトレードパネル:ポストトレードサービスの未来―プロセスを簡素化する新しいテクノロジーとは?
パネリスト
- エマニュエル・プティジャン 氏 | アムンディ・ジャパン COO
- 宇都宮 研 氏 | みずほ証券 執行理事 副Chief Process Officer 兼グローバルオペレーションヘッド
- 宮里 佳 氏| JSCC/ JPX 清算企画部 統括課長 (ITイノベーション)
パネルアジェンダ
- ポストトレードサービスにおける優先課題と取り組みは?
- 分散型台帳技術(DLT)やデータ管理と分析、クラウドなど、ポストトレードプロセスの簡素化と付加価値向上に寄与する新興テクノロジーの活用と効果は?
- 日本におけるポストトレードサービスの課題と将来像、あるべきソーシングモデル(テクノロジー及びサービスの調達方法)とは?
パネルの冒頭で、セレントは金融テクノロジー、中でもポストトレードサービスのグローバル動向を報告した。
モデレーター・キーノート:ポストトレードサービスの未来とテクノロジーの貢献
- グローバル・ポストトレード市場のテクノロジートレンド
- 日本の市場参加者の取り組み
取引所、清算機関、決済サービスなどの金融市場インフラ(FMI)事業体の取引量は、投資家がポートフォリオのリスクヘッジを図るため、資産クラス全体で急増している。取引所の収益が大きく伸びているのは、市場のボラティリティと金利の上昇に起因。一方で、FMIはデジタル化が進むエコシステムで存在感を保つため、次世代技術の導入を含むテクノロジーの現代化・効率化改革を推進している。
FMIは機関投資家によるデジタル資産への関心の高揚や、革新的なフィンテックとの競争に適応しながら、新しいビジネスモデル、商品、資産クラスをサポートするために進化を続けており、テクノロジーギャップの解消のため、パートナーシップや買収が進展している。全ての市場参加に共通するテーマは、「データ」を商業資産として収益化しようとする試みで、FMIは柔軟なテクノロジーを必要としている。
不透明な規制環境の克服のためにも、柔軟かつ機敏なテクノロジー手法がカギになる。今後のポストトレード市場においては、グローバルインパクトの大きなイベントは3点:1) CSDR(証券集中保管機関規則)の施行が新しいテクノロジーへの投資を促進することについて議論。2) SFDR(サステナブルファイナンス開示規則)は、バイサイドにおけるESG関連テクノロジーを業務に組み込み動きを加速する。3) 米国、カナダ、インドにおける決済サイクルの短縮化の動向は、取引処理の更なる自動化への取り組みを促す。
日本の市場参加者の取り組みはどうか?セレントが2022年秋に実施した「セレントサーベイ:テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム」の結果は、難局を克服しポストパンデミックの資本市場を切り開く日本の市場参加者の取り組みを伝える。本基調講演では、日本市場における制度改正対応の課題と優先事項についても言及した。