テクノロジーが革新する資本市場プラットフォーム
日本市場の変化をビジネスチャンスにする仕組みづくり
Key research questions
- パンデミック後のグローバル資本市場の動向は?
- 日本市場における制度改正と市場インフラへのインパクト、市場参加者の対応と戦略は?
- 市場の変化をビジネス機会にするには?
Abstract
セレントが2022年秋に実施した「セレントサーベイ:テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム」の結果は、難局を克服しポストパンデミックの資本市場を切り開く日本の市場参加者の取り組みを伝える。本稿はその要約と展望である。
前回の金融危機以降、キャピタルマーケッツにおけるリスク軽減、透明性の向上、資産の安全性・調和を求める制度改正は、テクノロジーへの要求とビジネスモデル、その経済性を一変させた。欧州に拠点を置くセルサイドの金融機関はここ数年、第2次金融商品市場指令(MiFID II)への準拠に向けて膨大なリソースと努力を注入してきた。その後も「トレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)」や「LIBOR移行」をはじめ、相次いで導入される新規制とそのためのテクノロジーへの対応を迫られている。米国では2024年を目標に、株式の決済期間短縮(T+1化)が議論されている。
加えて、マクロ経済環境の悪化に伴い、規制強化への対応はより複雑化している。長く続いた歴史的な低金利下でユーロ圏の経済見通しが低調であるのに加え、ブレグジットは波乱の展開が見込まれるとあって、欧州の金融機関は様々な課題を抱えている。中国やインドなど主要新興国の成長率は減速し、先行きの不透明感が増している。良好なビジネスモメンタムの続いた米経済の勢いとて、主要経済圏での地政学的要因によるボラティリティの上昇や戦争の影響が懸念されており、世界経済の成長をめぐる不確実性は増大している。
そして2022年、我々は今COVID-19の難局を克服しポストパンデミックの新世界に対峙している。キャピタルマーケッツのみならず、ビジネス全般から個人消費、医療、教育など、社会生活のすべてを根本的に見直す必要に迫られている。米欧の低金利局面は終わり、金融・資本市場の焦点はインフレと金融引き締めの綱引きに移ったように見える。しかし、金利/ 為替/ 株価の市場ボラティリティと変化のスピードは想像を超え、その最終的な規模と出口は見えていない。今信じることはただ一つ、その革新はテクノロジーがドライブすること。