モデルアワードプログラムを振り返る:ケーススタディレポートに学ぶ ー 創発企業への道
モデルアワードプログラム2022:日本語レポートシリーズを刊行
2023年、セレントが主催するイベント「イノベーション&インサイト」は17年目を迎えました。このイベントは、金融サービス業界における優れた技術革新を表彰するもので、銀行、保険会社、証券会社、ウェルスマネジメント、リスクプロフェッショナル、市場インフラなどの各分野で、クラス最高の取り組みを表彰しています。
今年もイノベーション&インサイト・デイ2023を成功に導いて下さった皆様、応募企業様、受賞企業様、そしてオンラインでご参加者の皆様に感謝します。
2023年のプログラムを振り返る
ライブセッションに参加できなかった方や、プレゼンテーションの内容をもう一度ご覧になりたい方は、簡単な登録からオンデマンドで、以下のオリジナルコンテンツ(英語)をご覧頂けます:
- 基調講演(プレナリーセッション):セレントの新(バーチャル)アナリストによるイントロダクション、チーフリサーチオフィサーによる2023年のイベント概要と基調テーマ「エマージェント・エンタープライズ」、セレントのコーポレートバンキング部門トップとオリバーワイマンのパートナーによる炉辺談話「複雑化するテクノロジー・エコシステムにおいて、金融機関が取るべき技術戦略」
- モデルバンク、モデルバイサイド、モデルセルサイド、モデルインシュアラー、モデルリスクマネジャー、モデルウェルスマネジャーの各賞の受賞者発表を含む、モデルアワードプログラムの概要
- 受賞者が語るケーススタディービデオ
- モデルアワード受賞プロジェクトの詳細レポート
新しい常識に向かって加速する創発企業
今日の金融機関はもはや単独で存在するものではなく、様々な業界を跨ぐ幅広いエコシステムの一部として共存しています。
顧客、サービスプロバイダー、さらには競合他社など、社外とのコネクティビティは、競争優位の重要な源泉。その中心は技術力であり、API、クラウド、あらゆる「データ」、マイクロサービス、人工知能・機械学習(AI/ML)などの最新テクノロジーを一流の機関が競い合っています。
セレントはこうした動向を「エマージェント・エンタープライズ(新たな企業体:創発企業)の構築」と呼び、今年のプレナリーセッションでこのコンセプトをさらに掘り下げました。そして、2023年の受賞プロジェクトからは、こうしたコンセプトをうまく引き出した革新的なアプローチを紹介しました。
- 法務部門をデジタルトランスフォーメーションによって新たな価値創造の源泉とするため、法務関連業務のデジタル化に着手した銀行の事例。時間のかかる手作業を減らし、人間の法務スタッフは付加価値の高い業務に集中できるように変革。
- 全ての顧客に対してトップクラスのファイナンシャルアドバイスへのアクセスを民主化したウェルスマネジメント会社の事例。クラウドネイティブのアルゴリズムベースのマッチングシステムを通じて、見込み客とファイナンシャルアドバイザーを結びつけるアプローチを現代化。
- AIベースのアンチマネーロンダリング(AML)検知プラットフォームの導入により全社的なリスク管理を革新したグローバルバンクの事例。複雑な取引でも一貫した結果が得られ、従来のサイロ化したアプローチで必要だったプロセスよりも少ない人員で対応。
金融機関が業務に特化したテクノロジー・ソリューションを模索し続ける中、全社レベルのエンタープライズ・アーキテクチャ(EA)の重要性は一層高まっています。部門に最適化されたソリューションを統合し、重複するシステムを排除し、生み出される付加価値の総計がその部分集合よりも大きくなるサイクルを生み出すにはどうすればよいか?
そのためにはまず、金融機関はどの機能がコアであり、どれがそうでないかを評価する必要があるでしょう。その再評価には、テクノロジー、データ、人、およびプロセスが含まれます。次に、各ビジネスラインを管理および実行する(仮想的な)企業内のサービス会社を構築し、不足している能力とリソースを算定する。また、データとビジネスのフローをより効率的かつ効果的にするため、データ・アーキテクチャとフレームワークを最適化することも必要でしょう。
すべてのプロセスを自社で実施するモデルは過去のものとなり、どの機能を社内に保持し、どの機能を外部プロバイダーと提携するかを決定する必要もあります。重要なのは、これらの決定をリスク管理された方法で行い、顧客、リスク、およびコンプライアンスへの影響を常に念頭に置くことです。
セレントは、そうした新しい常識に向かって加速する「創発企業」の取り組みを、2023年の受賞プロジェクトから学びました。
金融機関の進むべき道を示す
セレントイノベーション&インサイト(I&I)デイ 2023では、受賞プロジェクトを通じて明らかになったテーマに加え、金融機関に広く影響を与えるであろう業界および消費者の幅広いトレンドを取り上げました。
金融機関は、顧客にとって何が最善か、あるいは顧客にとって何が問題であるかに一層注視する必要があります。加えて、グローバル事例の研究においては、国や地域によって異なる経済環境や社会インフラ、その発展段階の理解も必要です。各社が自社の進むべき道を示すためにトレンドやベストプラクティスを検討する際には、ファンダメンタルズに注目することが重要です。
- 自社の現状を把握すること
- 自社の強みや可能性を含む、差別化されたバリュープロポジションを知ること
- その全てをひとりではできないことなので、パートナーやテクノロジーを特定すること
- 常に顧客を念頭に置き、絶え間なくイノベーションを実行すること
成功し続けるためには、常に新しいものに目を向け、他者と協力する方法を学び、これからも起こり続けるであろう「驚き」に迅速に適応していくことが必要です。
モデルアワードプログラム2023とケーススタディレポート
最新テクノロジーを最大限に活用して金融機関のあらゆる業務を最適化するとどうなるか?
この問いに答えるべく、セレントが毎年開催しているモデルアワードでは、金融サービス業界における優れたテクノロジーを表彰しています。アワードプログラムは、特にCOVID-19の大流行に見られるように、困難な状況下でテクノロジーがいかにイノベーションを推進したかを示す実例に焦点を当てています。
2022年10月に締め切られたノミネート期間中、セレントは約50の国と地域から300件以上の応募を受けました。モデルアワードプログラム2023は、50の受賞プロジェクトを選定し世界中で共有される金融イノベーションとテクノロジー活用の方法論を示しています。
モデルアワード受賞プロジェクトの日本語レポート、日本語ウェビナーはこちらからご覧頂けます。是非、貴社のリサーチ・ライブラリーに加えて下さい。金融サービスのイノベーションを加速した事例に巡り合えます。
モデルバイサイド2023 | ニッセイアセットマネジメントー企業年金のデジタル エンゲージメントを活性化【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
ニッセイアセットマネジメントの顧客向けデジタルコンサルティングツール「NAVIS」は、日本国内の未開拓な企業年金市場に初めて投入されたサービスである。これにより、これまで投資アドバイスを入手しにくかった企業年金のプランスポンサーは、よりタイムリーな情報、運用資産のアセットアロケーションに関する高度な投資分析、積極的な助言を受けられるようになった。
セレント・モデルアセットマネジャー・アワード2023 意思決定支援データおよびアナリティクス部門の受賞プロジェクトであるニッセイアセットマネジメントのNAVISは、デジタルチャネルを通じて企業年金市場とのやり取りを拡張/拡大し、次世代テクノロジーとアナリティクスを使って運用ポートフォリオのアセットアロケーションを積極的かつ先進的な方法でモニタリング/計画/最適化するためのツール。
- 日本の企業年金市場をターゲットとする業界初のサービス
- 市場の大きなギャップを解消
- 差別化された機能と分析能力
- デジタル接続とリアルな投資コンサルタントを融合
- 顧客関係の強化
- マーケティング促進と戦略的成果
モデルセルサイド2023 | SOCIETE GENERALEー資産としてのデータ【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
金融業界のあらゆる分野で、とりわけキャピタルマーケッツでは、データは最終的にパフォーマンスを生み出す「原材料」と捉えられる。だが、こうしたデータはインサイトの採掘につながる鉱脈でなければならない。その過程では先進的テクノロジー、専門ノウハウ、独自のデータセットへのアクセスが重要なカギを握る。Societe GeneraleのGlobal Markets部門 (SG Markets) は、そうしたデータ/アナリティクスプラットフォームの構築に向けた投資を行い、既存のレガシープラットフォームを社内外の顧客向けに拡張・デジタル転換する「ウィン・ウィン」プロジェクトに取り組んだ。顧客はデータへの効率的なアクセスがしやすくなり、パフォーマンスの向上につながった。SG Marketsはプラットフォームのコストを相互負担にすることで、収益源を確保し継続的な投資資金を調達できるほか、最終的に顧客関係の強化という利益を享受している。
- データは金融市場の中核であり、データ分析はパフォーマンス向上につながる。SG Markets (Societe Generaleの投資銀行におけるキャピタルマーケッツ・トレーディング部門) は、取引前/取引執行/取引後の広範なデータに直接アクセスできるサービスを提供している。
- 同社の「SG | Data & Analytics」は幅広い新興テクノロジー (API、ウェブテクノロジー、パブリッククラウドなど) を使って、過去データおよびライブデータに基づく完全に透明で、潜在的に期待される価格水準を提供する。
- このプロジェクトは「差別化要因としてのデータ」の力と「ユーザーエクスペリエンスが最優先」という2つの重要なビジネストレンドを象徴する事例。
モデルウェルスマネジャー2023 | MERRILLー選好に基づくアドバイザーマッチング【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
Merrill Advisor Matchは選好に基づくマッチング方式により、潜在顧客がMerrillの金融アドバイザーの中から個々のニーズに合ったアドバイザーを発見、調査、精査し、コンタクトする方法をパーソナライズ化する。同社はデジタルサービスの継続的な拡充を図っており、今回は前回バージョンを改良・強化した顧客向けアドバイザーマッチングツールを開発。マッチング基準を位置関係から多面的な顧客行動に基づくものにアップグレードして真にダイナミックなマッチングエクスペリエンスを提供し、金融アドバイス/プランニングへのアクセスを従来にはない方法で民主化した。マッチングのロジックとして、定量化できる重要な意思決定要因 (経済的目標、望ましいエンゲージメント、コミュニケーション/指針のスタイル、個人的な相性など) を盛り込んだオンライン質問票を導入し、顧客別にパーソナライズ化したマッチングリストを提示する。
- アドバイザー検索の分野では、意図に基づくパーソナライズ化が金融機関による新規ビジネス獲得を迅速でインテリジェントかつ的確な方法へと一変させている。
- スマートマッチングエンジンは、スマートテクノロジーを使って潜在顧客がアドバイザーを探索・選択する際の行動パターンを把握できるため、従来のリードジェネレーションのエコシステムを変えつつある。
- デジタルチャネル、マシンラーニング、最適化アルゴリズムを活用してパーソナライズ化された顧客とアドバイザーのマッチングは精度の高い潜在顧客発掘における次のフロンティアであり、獲得したリードを顧客に転換して持続的な関係構築と相互の金銭的成功へと導くデータ主導アプローチにつながっている。
モデルバンク・オブ・ザ・イヤー2023 | ICICI BANKー「カード顧客サポート」と「貿易サービス」におけるイノベーション【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
PART 1. カード顧客ライフサイクルのデジタル化
ICICI Bankは、クレジットカード顧客のために、堅固なデータセキュリティとコンプライアンスコントロールの下でオンボーディング(本人確認を含む)からクレジットカード利用・支出のシームレスなユーザー管理まで全体をカバーするデジタルソリューションを開発した。
- クレジットカードのための非接触型ジャーニー(セルフサービス)
- フリクションレスな非接触型オンボーディング(アシスト付きサービス)
- オートメーションからインテリジェントオートメーションへ
PART 2. 貿易サービス:複雑なものからシンプルなものへ
カスタマー360の取り組みの一環として、ICICI Bankは、顧客関係の深化、継続的な技術革新、シームレスなデリバリーに取り組んでいる。貿易サービス、デジタルプラットフォーム、ソリューションへの同行の投資は、この業界セグメントに対する同行のコミットメントを示している。
- Trade Emerge:バンキングにとどまらず、事業登録から知識ハブ、マーケットインテリジェンス、ロジスティクス、金融サービスに至るまで輸出入者のあらゆる貿易ニーズに応えるワンステップのソリューション
- One Bank One Flow(OBOF):同行のエコシステムの中に貿易フロー全体を取り込むことで、顧客の取引ライフサイクル全体に対応し、それによってクロスセルの機会を生み出す
- Trade Chain:信用状とオープンアカウントに基づく顧客の国内貿易取引を管理するためのブロックチェーンベースのエンドツーエンド・デジタルプラットフォーム
モデルインシュアラー・オブ・ザ・イヤー2023 | MAX LIFEーデータとAIを活用する生命保険会社【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
「人間よりも賢い知能を生み出すもの―人工知能、ブレイン・コンピューター・インターフェース、神経科学に基づいた人間の知能のエンハンスメントといった形で―はすべて、世界を変えるために最も多くのことを成し遂げるという点において、圧倒的に優れていることは間違いない。他のものは、同じ土俵に上がることすらできない」。これはElizer Yudkowsdyの言葉の引用であるが、認知科学が私たちの未来の世界に与えるインパクトについて、説得力のある見解を示している。セレントのモデルインシュアラー・オブ・ザ・イヤー2023を受賞したMax Life Insurance Ltdは、データの力と組み合わせた人工知能が今日実現しうることを示す好例である。
Max Lifeは、データと人工知能の力を活用し、競合他社との差別化を図りたいと考え、以下に取り組んだ。
- インテリジェントな生命保険バリューチェーンのエンドツーエンドのエコシステムの開発
- このエコシステムは、機械学習と深層学習ベースの予測モデル、コグニティブインテリジェンス(コンピュータービジョン、スピーチ、NLP)、リアルタイムのビジネスインサイトと意思決定システムなどを総合的に備えている
- クラウド上に置かれたデータアーキテクチャからなる強力な基盤レイヤーと、AI、ビジネスインテリジェンス、データエンジニアリング、テクノロジーの各専門チームの部門の垣根を超えた協力が、このエコシステムを支える
モデルリスクマネジャー・オブ・ザ・イヤー2023 | HSBCー金融犯罪を大規模に検出するクラウドベースのAMLソリューション【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
HSBCはグローバル銀行として革新的な取り組みを進め、Google Cloudと共同開発したクラウドベースのマシンラーニング (ML) 型ソリューションをマネーロンダリング防止 (AML) の主要な取引監視システムとして導入。Dynamic Risk Assessment (DRA) と称する同行の新たな不正検出システムは、Google CloudのAML AI (AIによるリスク検知システム) をコア部分に採用。HSBCは金融犯罪コンプライアンスに関する豊富な経験とデータ資産を生かしてAML AIが作成したモデルのトレーニングと微調整を実施。クラウドの拡張性と高性能の計算能力を備えた同システムは、巨大な顧客基盤を持つ同行のバッチ処理時間の大幅な削減と、不正検出能力と検出結果の正確性の向上につながる先進的モデルの推進に寄与。
- HSBCはG-SIB (グローバルなシステム上重要な銀行) として革新的な一歩を踏み出し、マネーロンダリング防止の主要な取引監視システムにクラウドネイティブソリューションを採用
- Dynamic Risk Assessment (DRA) ソリューションはGoogle Cloudとの協調的な取り組み
- HSBCのAIベースの取引監視アプローチはハイブリッド型アプローチに比べて明らかに有益
モデルアワードプログラムを振り返る:プログラム概要と業界動向、受賞企業の取り組み
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次は、貴社の出番です。
セレント・モデルアワード・プログラム2024への応募受付は、2023年6月に開始し、2023年10月13日に締め切ります。