テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム
市場の変化をビジネスチャンスにする仕組みづくり
【セレントサーベイ】 テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム:市場の変化をビジネスチャンスにする仕組みづくり
- セレントは、金融業界における各種の動向調査を定期的に行っています。今回のサーベイでは、キャピタルマーケッツにおけるIT投資の優先事項を調査します。
- 質問項目は10問で、ご回答は10分程で完了します。ご回答内容は全て統計的に集計したうえで、弊社調査レポートへ反映致します。調査結果をレポートに記載する際には、個人や個社を特定可能な情報を一切公開致しません。調査にご協力頂いた方には、後日調査結果の概要レポートを提供致します。貴社のお取り組みをお聞かせ下さい。
- オンラインでのご参加はこちらから:セレントサーベイ - 「テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム2022」
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世界のキャピタルマーケッツでは過去10年間にテクノロジーの革新が進み、そのペースは今なお衰えていない。リスク軽減、透明性の向上、資産の安全性・調和を求める規制改正は、テクノロジーへの要求とビジネスモデル、その経済性を一変させた。欧州に拠点を置くセルサイドの金融機関はここ数年、第2次金融商品市場指令(MiFID II)への準拠に向けて膨大なリソースと努力を注入してきた。その後も「トレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)」や「LIBOR移行」をはじめ、相次いで導入される新規制とそのためのテクノロジー対応を迫られている。米国では2024年を目標に、株式の決済期間短縮(T+1化)が議論されている。
マクロ経済環境の悪化に伴い、規制強化への対応はより複雑化している。歴史的な低金利下でユーロ圏の経済見通しが低調であるのに加え、ブレグジットは波乱の展開が見込まれるとあって、欧州の金融機関は様々な課題を抱えている。中国やインドなど主要新興国の成長率は減速し、先行きの不透明感が増している。良好なビジネスモメンタムの続いた米経済の勢いとて、主要経済圏での地政学的要因によるボラティリティの上昇や戦争の影響が懸念されており、世界経済の成長をめぐる不確実性は増大している。
そして2022年、我々は今COVID-19の難局を克服しポストパンデミックの新世界に対峙している。キャピタルマーケッツのみならず、ビジネス全般から個人消費、医療、教育など、社会生活のすべてを根本的に見直す必要に迫られている。米欧の低金利局面は終わり、金融・資本市場の焦点はインフレと金融引き締めの綱引きに移ったように見える。しかし、金利/ 為替/ 株価の市場ボラティリティと変化のスピードは想像を超え、その最終的な規模と出口は見えていない。今信じることはただ一つ、その革新はテクノロジーがドライブすること。
テクノロジー戦略の再考
キャピタルマーケッツのイノベーションは難局にある。市場参加者は、「規制対応」、「顧客ニーズの高度化」、「低収益性」のトリレンマに直面し、構造的な革新、つまりデジタル・トランスフォーメーションに大きな期待を抱く。一方でバイサイドの金融機関は、パッシブ運用によるベンチマーク・リターンのコモディティ化に直面し、セルサイドの金融機関には、低収益市場を戦い抜く「ブレイクアウト型成長ソリューション」を期待する。実際のところ、テクノロジーを起点としたイノベーションへの取り組みは今何処にあるのか?
前回のサーベイ(「資本市場のテクノロジートランスフォーメーション2019」)ではまず、各社の成長戦略とそこでのテクノロジーの役割について、過去3年間の取り組みを尋ねた。ビジネス全体におけるテクノロジーに期待した課題は何であったか?それらのビジネスへの影響とその克服状況をどのように評価しているか尋ねた。
想像通り、テクノロジーはトリレンマに立ち向かうものの、ダイナミックなイノベーションを起動するに至っていない。日本およびアジア太平洋地域(APAC)の市場参加者が取り組んできたテクノロジー戦略の課題は、ビジネスラインの再構築が最優先で、コストカット、規制対応が続いた。
新たなテクノロジーへの期待と取り組み
世界中のキャピタルマーケッツで、取引所関係者と市場参加者はエマージングテクノロジーの評価と適用に取り組んできた。前々回の「証券市場における次世代テクノロジーの動向調査2018 」では、クラウド、AI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ブロックチェーンへの取り組み状況を調査した。「適用済み」と「試行段階」を合わせた「取り組み中」の割合で、RPA 9割、AI/ ML(マシンラーニング)8割、DLT(分散型台帳技術)/ ブロックチェーン 7割、クラウドは3/4の回答者が既に舵を切っていた。新たなテクノロジーを商用に展開する機は熟している。
セレントはこれまでも、キャピタルマーケッツにおけるこうした新テクノロジーの隆盛に対して、様々なイノベーションモデルの提唱をしてきた。過去のセレントレポート「証券決済革命」シリーズにおいては、「インフラ革命へのパラダイムシフトとデジタル資本市場 」、「モジュラー・フィナンシャルサービス 」、「システムアーキテクチャとITマネジメント、ソーシングモデルの革命 」を提案し、「マイクロサービス 」によるソフトウェアエンジニアリング改革と、「API金融サービス 」によるビジネスモデル革新の必然性を主張してきた。そうした提唱を象徴するコンセプトが「オープンプラットフォーム」である。地平線の彼方に広がる新境地において、資本市場はオープンプラットフォーム上の商品とサービスのシームレスな提供を巡る共創と競争の場となるだろう。
テクノロジーが加速するキャピタルマーケッツの現代化
次の10年間を展望して、2022年は市場参加者が自らのテクノロジー戦略を改訂する際の「道標」の年になるだろう。金融機関は次の10年を見据えたトランスフォーメーションの道筋を歩み出す時期にきている。不確実性が一層高まった現在、その将来を予測するのは容易ではないが、確かな点が2つある。1つは、市場参加者は複雑性と不透明性が増した市場環境、規制環境、そして事業環境の下でも着実に取引を続け、収益を上げる必要があるということ。もう1つは、他産業同様にキャピタルマーケッツにおいても、新たなテクノロジーが広範に普及し、それは新たなプレーヤーの参入を招き市場構造の激変を促していることである。
既に、多くの市場参加者が未知の市場を想定して新モデルを模索し始めている。それは最先端の金融機関が抱く新たなプラットフォームへの強い関心やその様々な見解にも反映されている。つまり、一気呵成に次世代モデルへのシフトが進む可能性がある。一方で、リスク回避志向の強い大多数の金融機関は自ら率先して動くことは少ないものの、新たなモデルの有効性が伝われば迅速に追随する傾向がある。しかし、そうした「追随」の動きすらテクノロジーの柔軟性がその足取りを左右するだろう。先進的な市場参加者は、リスク回避の意味からも積極的にクラウドやAPIを採用し、ITのアジリティを高め「追随」速度を高めている。それは不確実性の高まった現在の「ニューノーマル」となるだろう。
関連するセレントレポート
- 「資本市場におけるテクノロジートランスフォーメーション:オープンプラットフォームが切り拓く新境地」(2020年4月)
- 「日本の証券市場における次世代テクノロジーの動向:新たなテクノロジーとソーシングモデルの胎動」(2019年2月)
- 「ポストトレード市場革命の足音:デリバティブ清算インフラ刷新への取り組みと課題」(2018年1月)
- 「証券決済革命:市場参加者の動向とモジュール化の提言」(2017年9月)
- 「証券決済のパラダイムシフトへ:日本市場の現状と展望」(2017年6月)
- 「マイクロサービス:雲の彼方のソフトウェアエンジニアリング革命」(2018年4月)
- 「日本のオープンAPIバンキング:その枠組み、脅威と機会」(2018年6月)
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