オンライン詐欺の阻止と金融詐欺への対抗:注目される英国の動き
Abstract
本レポートの概要:
- 英国における銀行による詐欺被害者(APP詐欺)への損害賠償義務化
- 業界のこの新しい義務化への対応準備状況(利用可能なベンダーの事例など)
- 同様の規制を検討している他国とそのアプローチの主な共通点と相違点
- セレントが提唱する「詐欺撲滅のフライホイール」- 銀行や関係機関による詐欺師阻止と詐欺対応の方法
詐欺師が巧みな手口で人を騙し不正な口座に送金させる「承認された支払い(APP)詐欺」は、世界の多くの地域で大きな問題となっている。英国は、最初のリアルタイム決済ネットワークの1つを持つ国として、この問題との戦いの最前線に立ち続けてきた。にもかかわらず、英国のAPP詐欺被害額は2023年には4億6,000万ポンドに達し、被害件数も増え続けている。さらに、決済サービスの提供認可を受けた銀行やその他の機関によってAPP詐欺対策にばらつきがあり、すべての顧客に対して一貫した結果を提供するには、被害賠償に関する自主的な合意だけでは十分だとは言えない。
そこでこの度、決済システム規制当局(PSR)は、世界初の動きとして、銀行やその他の決済サービスプロバイダー(PSP)に詐欺被害者へ返金すること、および送金銀行と受取銀行が返金額を半々負担することを義務化した。本レポートでは、2024年10月7日に施行されたこの新しいルールについて詳しく説明する。
当然のことながら、この新しいルールがどんな成果をもたらすのかと、世界中の注目が英国に集まっている。米国やEU、オーストラリアやシンガポールなど、多くの国が独自の対策を検討または導入しており、いずれも消費者保護の強化を目的としているが、そのアプローチは、対象(対象となる詐欺の種類、など)や適用範囲(銀行のみか他の業界も含むか、など)、要件(償還か罰則か、など)の点で相違している。
詐欺防止が重要なのは今に始まった事ではないが、この新しい義務化によってこの問題への注目が大きくなり、銀行やその他の機関における対策強化の緊迫性が高まることであろう。セレントは、銀行が不正対策に利用しているベンダーや業種別ソリューション、銀行や業界関係者による詐欺防止対策などを本レポートで紹介している。
セレントは、この戦いに一人で勝つことは誰にもできないと考えている。詐欺防止対策のフライホイールを動かすには、さまざまな業界関係者の投資と協力を要する。詐欺を根絶するための協調的な取り組みは、個々の銀行による詐欺や返金請求の管理を簡素化し、データ共有とコラボレーション強化によって、欺の発生源での阻止と詐欺やマネーミュールの検出モデルの改善が促進される。
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