2023-24年 グローバルなリスク関連ITの優先事項と戦略
リスクとコンプライアンスにおけるAIの利用が加速
Abstract
米シリコンバレーバンク (SVB) の破綻をきっかけとする金融不安で幕を開けた2023年は、チーフ・リスク・オフィサー (CRO) にとって金融リスクが最大の懸念事項となった。しかし、金融危機が回避されたことで、現在はオペレーショナル・リスクが再びリスク管理の最優先事項となっている。リスク担当エグゼクティブにとっての最新の懸念事項の1つとして、生成AIシステムの広範な採用がある。生成AI技術を業務に統合している金融機関はまだほとんどないが、大規模・小規模いずれの金融機関も生成AIの実験に積極的に取り組んでおり、試験運用に向けて最も影響力があり、最も安全なユースケースを模索している。コールセンターに次いで、リスクとコンプライアンスのユースケースが優先事項の上位にランクされており、CROが主導してこの新しいテクノロジーの導入を進めている。ユースケースが明確でないことから、リスク担当エグゼクティブはAIの導入と展開の波に備え、データモデル、データの衛生状態、データガバナンスの強化を図っている。
しかし、世界のリスク担当エグゼクティブ216人を対象に行ったセレントの調査で目立ったのは生成AIだけではない。この調査で得た回答から、次の4つの項目の優先度が高いことが明らかになった。
-強固なデータ基盤の構築
-オペレーショナル・レジリエンスの向上
-新たなリスクの管理
-次世代のテクノロジーを活用した金融犯罪対策
全体的なリスクのIT予算は4.6%増加している。分野別で見ると、オペレーショナルリスクのIT予算の伸び率が5.7%と高く、財務リスクのIT予算の伸び率は3.5%と相対的に低くなっており、金融犯罪対策とコンプライアンスのIT予算の伸び率がその間の4.5%となっている。地域別では、北米と欧州ではIT予算全体の伸びを上回るペースでリスクのIT予算が増加しているが、アジア太平洋地域ではリスクのIT予算の伸びは全体を下回っている。
生成AIは、金融機関が実験的に使用している新たなテクノロジーのトップとなっている。世界全体では、現在44%の金融機関が生成AIのユースケースを調査しており、さらに31%が2023年または24年のロードマップに生成AIに関連するプロジェクトを組み入れている。僅差で2位となったのがAIとMLを活用した広範なイニシアチブで、現在43%の金融機関がこのユースケースを調査している。
2024年はAIが優先事項の上位となっているが、現行予算のIT投資では、コスト削減やセキュリティの向上といったより一般的なテーマが焦点となっている。このことは、IT投資の優先事項の上位にロボティック・プロセス・オートメーション、アイデンティティアクセス、およびサイバーセキュリティが入っていることからも明らかである。