セレント・モデルリスクマネジャー・アワード2021受賞企業発表
受賞プロジェクトを見ると、金融機関がリスク管理およびコンプライアンス業務における次世代テクノロジーの導入で確実に進歩を遂げていることがうかがえる。
セレント・モデルリスクマネジャー・アワード2021の受賞企業:Credit Suisse, Fino Payments Bank、Goldman Sachs、HSBC、Standard Bank、State Street、SwedbankおよびUnited Overseas Bank
以下のリンクから、受賞プロジェクトの詳細なケーススタディとインタビュービデオを閲覧可能。
モデルリスクマネジャー・オブ・ザ・イヤー・アワード受賞企業:Credit Suisse –「Risk360 Advanced Risk Analytics Platform」
カテゴリー:デジタル&エマージングテクノロジー
概要:Credit Suisseのアジア・パシフィック地域のチーフ・リスク・オフィスは、リスクの特定および財務リスク、オペレーショナルリスク、コンプライアンスの分析を可能にするプラットフォームを開発した。リスクおよびコンプライアンスのワンストップショップとなる同プラットフォームは、インメモリ方式のマシンラーニング・アルゴリズムを使って社内外のソースから得たデータを統合・分析し、リスクオフィサーに実用的アラートやアドホック分析のサポートを瞬時に提供する。
モデルリスクマネジャー・アワード受賞企業:Fino Payments Bank – パンデミック中に全行規模の不正管理ソリューションをリモートで導入
カテゴリー:レガシー&エコシステムのトランスフォーメーション
概要:Fino Payments Bankは、Clari5が開発した最新のAIを装備した全行規模の不正防止ソリューションを全てのチャネルに導入した。新型コロナのパンデミックを受け、導入作業は同行とベンダーが全てリモートで行った。リモートで導入する場合は綿密かつ最適なプロジェクト管理が求められるが、意外にも、結果的には効率性の向上やより迅速なプロジェクトの達成につながった。
モデルリスクマネジャー・アワード受賞企業:Goldman Sachs – マシンラーニング機能を装備したウォッチリスト・スクリーニング・ツール
カテゴリー:データ、アナリティクスおよびAI
概要:Goldman Sachsは、効率的にヒット件数を最小化し、要注意人物を効果的に特定でき、一方で急拡大する顧客基盤のサポートに必要なスケーラビリティを備えたウォッチリスト・スクリーニング・ソリューションを必要としていた。同行はマシンラーニング機能を装備したスクリーニング・ソリューションの潜在的な能力の高さに注目し、市販されている外部のソリューションを精査した結果、リテールバンキング顧客用のスクリーニングツールを社内開発することを決めた。新たなソリューションの導入により、アラート件数が100分の1に減少したほか、アラート発信の最適化に伴う人員削減で推定3,000万ドル相当のコスト削減を実現するなど、大きなビジネス成果が上がった。
モデルリスクマネジャー・アワード受賞企業:HSBC - マシンラーニングとクラウドを駆使した保険専用の取引モニタリングソリューション
カテゴリー:レガシー&エコシステムのトランスフォーメーション
概要:HSBCは保険専用ソリューションの開発を目指してこのプロジェクトを立ち上げ、目的を達成した。保険業務におけるマシンラーニング(ML)の活用、とりわけ取引モニタリングアラートの自動発信における利用は、マネーロンダリング対策におけるMLの代表的なユースケースである。HSBCはこのソリューションを、Featurespaceのプラットフォーム「ARIC」を使ったグーグルのクラウド上にデプロイしており、大手金融機関の中でいち早くマネーロンダリング対策にクラウドを採用した素晴らしいケースといえるだろう。
モデルリスクマネジャー・アワード受賞企業:Standard Bank - リモートによる顧客オンボーディング・ソリューションのコンポーネント「KYC On The Go」
カテゴリー:デジタル&エマージングテクノロジー
概要:テクノロジーの進化に伴って顧客のニーズが高まるなか、スタンダード・バンクは「デジタル化」を競争上の強みである顧客中心主義をサポートするための戦略的支柱に据えた。そして中小企業の顧客オンボーディングのデジタル化に向け、本人確認(KYC)書類の収集手続きをデジタル化するための独自のソリューションを開発・導入した。Microsoftの「Power Apps」上に構築したソリューションは簡潔ながらも、多くの時間と労力を要する紙ベースの作業を代替すると同時にKYCの要件を100%満たしている。
モデルリスクマネジャー・アワード受賞企業:State Street Global Advisors – ポートフォリオ管理に必要なマクロ経済関連リスクの測定
カテゴリー:データ、アナリティクスおよびAI
概要:State Street Global Advisorsは、運用するポートフォリオが抱えるマクロ経済関連リスクのモニタリング機能を必要としていた。背景には、ポートフォリオのリスク管理、最適なポートフォリオの構築、ストレステスト、リターンの要因分析を行う上で、マクロ経済のリスクエクスポージャーを把握することの重要性を認識していたことがある。そこで、一連のマクロ経済要因に照らしてファンダメンタル要因に基づくリターンを予測し、これを新たなマクロ経済モデルとすることで目的を果たした。結果的に、別のモデルを一から作成する必要がなくなり、業務コストの削減にもつながった。特に留意したのは、調整後のモデルと既に使用しているファンダメンタルモデルの整合性がとれているという点である。ソリューションの開発と導入にはベンダーのQontigoが積極的に関与し、サポートした。
モデルリスクマネジャー・アワード受賞企業:Swedbank – カード不正管理機能の近代化と顧客エクスペリエンスの向上
カテゴリー:レガシー&エコシステムのトランスフォーメーション
概要:Swedbankは、「欧州決済サービス指令第2版(PSD2)」が定める強力な顧客認証(SCA)要件が顧客エクスペリエンスにフリクションをもたらしかねないと懸念していた。具体的には、同行の地元である北欧・バルト諸国内のオンラインおよび非接触決済に2段階認証を義務づけている点が気がかりだった。そこで、ACI Worldwideのソリューションを使ってマシンラーニングに基づくトランザクションリスク分析(TRA)を行い、規制で認められたSCA要件の適用除外を最大限利用することで顧客エクスペリエンスにおけるフリクションを減らす戦略を策定し、不正行為率を抑制しつつ顧客エクスペリエンスを向上させることに成功した。
モデルリスクマネジャー・アワード受賞企業:United Overseas Bank – マネーロンダリング防止のための取引モニタリングとネームスクリーニング向けのマシンラーニングを利用したアラート・トリアージ
カテゴリー:データ、アナリティクスおよびAI
概要:United Overseas Bankはマネーロンダリング防止(AML)業務の管理と合理化を進めるにあたり、人工知能(AI)とマシンラーニング(ML)を使ったソリューションの持つ高いポテンシャルを認識していた。同行がTookitakiと共同開発して導入した「AML Suite (AMLS)」は、AMLにおけるAI実用化の代表的なユースケースである。同行が、取引のモニタリングとネームスクリーニングの両方でAIを同時に実用化した点は特筆すべきである。このションの導入により、検出/誤検出をより正確に特定できるようになったほか、同行のAMLプログラムの効率性・有効性が向上するなどの目覚ましい成果が得られた。また、マネーロンダリングの疑いがある活動の検知・防止に役立つ情報をより迅速かつ正確に得られるようになり、同行の金融犯罪に関するコンプライアンス業務の強化につながった。