SPAAの紹介:オープンバンキングから直接収益を得るためのフレームワーク
Key research questions
- SEPA決済口座アクセス (SPAA) スキーム とは?
- 銀行はこのスキームに参加することで、どのように収益を上げることができるのか?
- SPAAの今後の展望は?
Abstract
決済業界ではさまざまな規制の変更や取り組みが多数行われていることから、SEPA決済口座アクセス (SPAA) スキームの存在は見逃されがちである。しかし、これは、欧州におけるオープンバンキングの発展を形成する上で、PSD2 (欧州決済サービス指令第2版) にも劣らない革命的な変化をもたらす可能性がある。
SPAAスキームは、銀行が単一ユーロ決済圏 (SEPA) において事前に定義された一連の新しい付加価値API提供サービスを提供できる任意のフレームワークである。これは、PSD2によって構築された基盤の上に立つものとして設計されており、PSD2の必須要件に追加される「プレミアム」レイヤーとして機能する。銀行にとって極めて重要になるのは、これらのサービスが有料化されることであり、料金体系はすでに決まっている。
銀行がSPAAに関心を持つべき最大の理由として、オープンバンキングから直接収益を得る機会が生まれることがある。このスキームには、金融機関が直接収益化できる12の付加価値決済サービス、データ資産、その他のプレミアム機能が主に含まれている。これらの機能は、現在PSD2による決済開始APIを使用できない販売業者などの企業に対し、様々な決済ユースケースを促進するために設計されている。その中でも最も注目されているのは、英国のVRPとほぼ同等の機能を提供するDynamic Recurring Paymentsである。しかし、現時点では英国とは異なり、SPAAの下で提案されている機能には明確な価格設定の枠組みが含まれている。
SPAAは、銀行のさらなる決済イノベーションを支援し、収益フローをもたらす可能性があるが、いくつかの課題に直面しており、今のところ採用する動きは限られている。最も差し迫った課題は、このスキームが完全に任意であり、欧州の銀行にとってはコンプライアンス関連のコストが増加している中、投資するためのリソースを確保することが困難になっていることである。
さらに、一部の銀行はビジネスケースの他の側面で課題を抱えている。明確な収益フローが見込める一方で、コスト回収期間の長さに対する懸念が残るほか、カード取引量の一部が失われる可能性があるイニシアチブへの投資に慎重な銀行もある。SPAAはまだ初期段階にあるイニシアチブだが、これらの懸念はいずれも銀行の参加を制限するリスクにつながるものである。
セレントは、SPAAには多少の不確実性があるものの、参加するメリットは大きいと考えている。SPAAは決済分野において真のイノベーションを推進する可能性があり、また、銀行の収益を保証することでイノベーションを実現すると期待できることから、銀行は2024年および2025年に予定されているパイロットプログラムへの参加を真剣に検討すべきである。いずれにせよ、オープンバンキングによる決済取引は今後も増加するとみられるため、こうした決済フローから収益を得る方法を提供するプログラムへの参加は、明らかに検討する価値がある。
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