大切なのは中身:デジタルウォレット、スーパーアプリ、エンベデッドファイナンスを紐解く
用語の違いに戸惑わないように
Abstract
消費者が日用品やサービスの代金を支払ったり、友人に送金したりする方法は急速に変化している。ほとんどの場合、以前よりも選択肢が増え、ユーザーエクスペリエンスが向上している。しかし、こうしたイノベーションとエクスペリエンスの多様化により、金融業界では用語の統一が損なわれ、比較可能な指標で情報を伝えたり、報告したりすることが困難になったという問題も起きている。
確かに、多くの用語が使う人の視点によって異なるため(例えば、プラットフォームのプロバイダーが「エンベデッド・ファイナンス」と呼ぶものを、カード発行銀行は「カード・オン・ファイル」と呼ぶことがある)、混乱を招く可能性がある。しかし、用語の違いに惑わされてはならない。定義にとらわれず、戦略的な目標に注力することで、顧客の問題を解決し、優れた決済エクスペリエンスを提供することができる。
このレポートの発端となったのは、顧客や業界関係者との継続的な対話である。過去12~18カ月間に、セレントはデジタルウォレット、スーパーアプリ、エンベデッドファイナンスについて多くの質問を受けてきた。そこで、各用語の意味を紐解き、さまざまな市場で使用されている多種多様な決済ソリューションについて詳しく解説するのは有益であると考えた。
また、11年程前のレポート「モバイルウォレットの中身は?:小売店舗でのモバイル競争を勝ち抜く」も再度確認しておきたい。これは2011年11月に発行されたものであり、当時はGoogle Walletの最初のバージョンが発表された直後で、Apple Payが公表されるかなり前であった。同レポートでは、モバイルウォレットが成功するために満たすべき一連の要件を提案し、将来に向けていくつかの予測を示した。当時は50%の的中率を見込んでいたが、今こそこのレポートの内容を振り返り、自らを採点する良い機会になりそうだ。ネタバレ注意:それほど大きく外れてはいない!