AI時代の金融詐欺対策:難題を理解する
生成AIによって、ソーシャルエンジニアリングを基盤とする高度で大規模な詐欺の実行が増えつつある。金融機関は、トランスフォーマーモデルなどのより強力なAI活用ツールを活用し、「毒をもって毒を制す」の姿勢でこの脅威に対抗していく必要がある。
Abstract
セレントは、2024年に発生した金融詐欺の約2割がAIによるものであり、その数はこれからもどんどん増えるであろうと予測している。
一方で、AIを使った不正検知の技術も進歩を続けており、詐欺や不正行為の検知率も上がっている。今後さらに詐欺対策の効果を上げることができるかどうかは、トランスフォーマー技術と生成AIの活用にかかっている。銀行やクレジットカード決済サービス業者は、テクノロジーパートナーと協力して、詐欺対策に生成AIを盛んに取り入れようとしている。セレントが実施した最近の調査では、金融機関が生成AI活用を最も積極的に検討している機能が「不正行為の検知と防止」であることが分かった。また、最前線にある金融機関やテクノロジープロバイダーは、詐欺の検出にトランスフォーマーモデルを直接適用しようと試みている。
機械学習と生成AIによってこれまでにないほどの効率的なソリューションが実現する中で、不正対策の改善がそこまで進んでいないのは、モデルそのものではなくそれが実行されるインフラに問題があるためである。大手銀行や大規模決済の行われる環境では、ハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどの制約によって詐欺防止モデルがリアルタイムに実行されるのは取引のごく一部で、取引全体を通じて不正を検出することが不可能になっている。
2022年、IBMは、この問題の解決をサポートするものとして、メインフレーム環境内のチップ上で動作する革新的なAIアクセラレーターを発表した。これにより、銀行やカード決済業者があらゆる取引に対してリAIモデルをリアルタイム実行できるようになり、システム全体における不正取引の検知・防止能力が大幅に向上した。
IBMは最近、この技術の第2世代を発表した。IBMによれば、この新しいAIアクセラレーターは、従来の機械学習モデルとトランスフォーマーモデルをリアルタイムで同時実行することができるため、金融機関が「毒をもって毒を制す」として生成AIの能力を詐欺の検出に直接活用することが可能となる。
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