データはトランザクション・バンキングの基盤:貴社の戦略にはデータが織り込まれているか?
私は最近Celentに入社したが、過去の職歴の大半はグローバルバンクやテクノロジーベンダーと共に (又そうした組織の中で) ビジネスとテクノロジーが交わる領域で働いてきた。セレントで働くことはとても刺激的だ。なぜなら旧来のトランザクションバンキングサービスの刷新であれ、全く新しいソリューションの開発であれ、堅実なビジネスとして認識されていたものが今やすさまじい速さで変貌しているからだ。ビジネスのスピードが増す中、モバイルテクノロジー、API、クラウドプラットフォーム、そしてデータの価値に対する新たな認識、これらはすべてコーポレートバンキングの未来を実現してくれるものだ。
2021年第4四半期、セレントは「コーポレートバンキングの勢い回復:2022年に実行中の研究テーマ」をリリースし、2022年のリサーチテーマを推進する以下5つの重要な優先事項を明らかにした。
1.顧客エンゲージメント実現の最適化
2.決済業務においてディスラプティブであるが必要不可欠なものを導入
3.エコシステムアプローチによる成長
4.商品のイノベーションと差別化の推進
5.テクノロジートランスフォーメーション・ツールキットの多様化
これらすべてのテーマを織り上げる1本の重要な糸があると私は考える。それは「データ」である。「データ」とは、データをどう管理・運営するのか、そしてその目的は何かといった難しい問題を提起する複雑なトピックを意味する単語である。
- この世界で最もデータ集約型である業界のひとつがバンキングである。データによってビジネスを変革してきた他の業界に比べ、コーポレートバンキングは膨大なデータを活用する好機を逃すリスクがあると言える。データのテクノロジーと機能は進化を続け、より効果的なデータ管理、より優れたビジネスインサイト、新しい商品やサービスに対する最新基盤の実現が可能となっている。データの力を利用することが依然として難しいのは何故だろう?
- より大規模なトランザクションを確実に実行することは、トランザクションバンキングサービスにおいて当然のことだ。かつてデータは運用による副産物と見なされ、調整やレポート作成に使用されていた。セレントが行った最近の調査(「決済データの収益化における期待と現実」)では、銀行の38%がデータ収益化戦略を決済インフラ投資の目的としてきたことが分かっている。回答者の過半数は、データ投資によって既存の決済サービスや銀行サービスの効率が向上するとの考えである。新たなビジネスモデルの機会について考えた回答者ははるかに少ない。どうやらデータは依然として過小評価されている (あるいは少なくとも活用度が低い) 資産のようだ。データ資産についてより幅広い視野を持つことは、トランザクションバンクの成長にどのように役立つだろう?
- 多くの銀行は、古典的な商品管理方法に固執してバンキングサービスと収益創出を行っている。そして独立した「データチーム」も存在している。これは主として「バンキング業務」と収益認識に必要とされたオペレーション要件とプロセスの当然の結果である。しかし法人顧客からは単なる「バンキングサービス」だけではなく、経営の効率化に役立つソリューションを求める声が大きくなってきている。そのためには情報をベースとした新しいタイプのインサイトとサービスが必要となる。バンキングエクスペリエンスの変革のため、ソリューション戦略にデータを組み込むとはどういうことだろうか?
繊維製品に例えるまでもなく、データはトランザクションバンキングのファブリック (基盤) である。従って、データ戦略 (および投資) はあらゆるビジネス戦略に欠かせない要素であるはずだ。
今後数か月の間に、私は銀行やソリューションプロバイダーを対象としたリサーチでこれらのトピックをさらに掘り下げていく予定だ。これまでと同様に、セレントのリサーチのアジェンダについて、皆様からのご意見や業界の状況に関するフィードバックをお寄せ頂きたい。