決済サービスと決済インフラ
「決済インフラ」シリーズ パート3 ― ホールセールペイメント編のハイライト(その1)
本レポートシリーズは、セレントのペイメントタクソノミーに基づき、A) 決済手段とチャネル、B) 法人決済:主に銀行から(金融法人を含む)法人顧客に提供される決済サービス(ホールセール決済サービス、大口決済サービス)、C) 個人決済:主として銀行から(小売店を含む)個人顧客に提供される決済サービス(リテール決済サービス、小口決済サービス)の動向に言及する。加えて、各種決済サービスの背景、競争条件として、D) 金融市場インフラ(FMI)を捉える。
これまでに、日本の決済インフラの要諦である、全国銀行データ通信システム(全銀システム)をPart 1で、日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)をPart 2で考察した。
本Part 3では、B) 法人決済、すなわち大口決済、ホールセールペイメントに注目し、決済インフラの高度化、新たな技術の隆盛とサービス事業者の出現、そこでの新たな価値とリスクの連鎖を把握し、決済サービスの高度化やディスラプティブな決済サービスの創出において考慮すべきグローバルトレンドと、日本市場の現状、今後の取り組みについて言及する。
また、続くPart 4では、A) 決済手段とチャネルの多様化の進展、C) 個人顧客に提供される決済サービス(リテール決済サービス、小口決済サービス)の動向、そこでの組織とテクノロジー利用の動向に言及する。
本稿は、6回シリーズでそのエッセンスを紹介する、第1回である。
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金融サービスの根幹を成す決済サービスと、それを実現する決済システムは、多様な定義と解釈から、しばしば混乱と誤解の中で語られてきた。特に、その範囲と提供機能の分類において、枠組みを決めた議論が重要と考える。セレントは、そうした決済システムを、資金決済システムと証券決済システムという2システム区分と、取引・指図・照合、清算、決済という3機能フローという枠組みでとらえる。
グローバル金融危機以降、金融市場インフラを考察する際には、①資金決済と証券決済を包含する枠組みで捉え、②取引・指図・照合といった言わば決済フロントの機能のみならず、清算、決済のミドル、バックの機能を一連のフローとして把握し、③そこでの価値とリスクの連鎖を総体で掴むことは、リスク管理の観点のみならず、決済サービスの高度化や新たなディスラプティブな決済システムの創出においても重要である。