2016年後半のカンファレンスを振り返る
カンファレンスは、いつも刺激に溢れています。2016年もアジアの各地で、パネルディスカッションやプレゼンテーションの機会に恵まれました。自らのプレゼンテーションを通じて、過去のリサーチ成果を発信するだけでなく、カンファレンス・チェアやパネル・モデレータの役割は、業界ソートリーダーとのインプロビゼーションであり、将来のリサーチトピックスやインサイトテーマを仕込む、貴重な瞬間です。人が出会い、意見を交換し、議論を深める。そのための準備と当日の緊張感は、アナリストの責務であり、醍醐味でもあります。 本稿では、2016年後半の5つのカンファレンスを振り返ります。銀行、保険、証券、ウェルスマネージメントの各業界の議論に共通したキーワードは、引き続き、フィンテック、デジタル、そしてモダナイゼーションでした。
Insurance, Digitization and Bubbles(7月1日:東京)
保険業界は変革を迫られています。超低金利、新規事業参入者の増加、激化する価格競争、顧客との関り方の急激な変化が、保険会社の商品/ビジネスモデルを揺さぶっています。モノのインターネットやスマートロボットだけではなく、いまやブロックチェーンも保険業界に大きく影響しつつあります。 こうした新しいテクノロジーは、本当に業界を根底から変えてしまうのでしょうか? 仮に変化があるとするならば、いつ、どんな出来事が、どのような順序で起こるのでしょうか? セレント主催の本イベントでは、世界の保険業界におけるデジタル改革の最新トレンドを紹介し、お招きした日本の保険業界を代表するソートリーダーの皆様と、中長期的な視点での将来像を模索しました。
- 世界の保険業界におけるデジタルトランスフォーメーションの最新トレンド
- InsurTechが保険業界の未来、ビジネスモデル、事業運営に与える影響
- 短期、中長期的な視点での展望、業界の未来図
- 日本におけるInsurTechの現状と展望
Asia Anti-Money Laundering Summit(7月13-14日:シンガポール)
アジアにおいても欧米同様に、規制の継続的な改正、最大手の金融機関における規制違反事例など、AMLの運営管理全般を改善する必要性が高まっています。電子取引の爆発的な普及は新たな課題をもたらしており、金融機関が様々な事象をチェックする際に、もはや規制当局や政府公認のブラックリストだけでは不十分な状況にあります。 AMLはまた、海外業務を展開する大手銀行だけのテーマではなく、全金融機関において同様な備えとその効率化が問われる時代となっています。本イベントは、アジアの保険業界を中心としたコミュニティにおいて、AMLとKYCを真正面から討議する場となりました。 セレントからは当日、以下の既刊レポートを中心に、「ユーティリティモデルの隆盛とAI適用」に関する報告を行いました。
Asia Insurance Technology Awards(9月5-6日:シンガポール)
2016年も引き続き、セレントは、AIR の主催する Asia Insurance Technology Awards (AITAs) の審査員を務めました。アジア各地の保険業界における、イノベーションと現代化に関する先進的な取り組みを表彰するこのイベントは、セレントの主催するアワード:セレントモデルインシュアラー と併せ、当社アジア保険部門の2大イベントとなります。 新たなテクノロジー、ビジネスモデルそして業界構造や組織変革への取り組みが、6つアワードカテゴリーにおいて表彰されました。中でも、Best Newcomerに輝いた Everledger(英国)、Digital Transformationを獲得した PetSure(オーストラリア)の両社は、InsureTech時代を象徴する取り組みと賞賛されました。
- IT Leadership: Liberty Videocon General Insurance
- Best Insurer, Technology: New China Life Insurance, Max Life Insurance
- Digital Transformation: AXA Asia, PetSure (Australia)
- Big Data and Analytics: AXA Hong Kong
- Best Newcomer: Everledger
- Innovation: IDBI Federal Life Insurance, Ping An Property & Casualty Insurance Company of China
5th Asia Insurance CIO Technology Summit(9月5-6日:シンガポール)
AITAと同時開催のアジア保険CIOサミットにおいて、キーノートスピーチ「InsurTech & Digital: A Global Round-Up 」を提供しました。 さて、保険会社の存在価値とは何でしょうか?
- 安心、安全、健康な人生を支援する
- 企業活動の全てのリスクを担保する
- 人生の、企業活動の不安とリスクを軽減する仕組みの提供
様々な表現で語られますが、全てに共通することは、「顧客中心」主義。一方で、これまでの金融機関におけるテクノロジー活用の中心命題が、長らく
- システム化による、人手から機械への代替による合理化、コスト削減 であったことは事実です。
しかし、テクノロジーの進化とその爆発的な普及は、こうして古典的な命題を激変させました。本キーノートでは、情報とテクノロジーを手にしたデジタルな顧客に対峙する現代の金融機関は、
- 「デジタルな顧客中心」主義であるべき と提唱しました。
また、デジタル世紀の金融機関が遭遇している、急激な業界構造の変化に対して、
- 「戦略自由度の担保」とそれを実現する「アーキテクチャ」 も提案しました。
TradeTech Asia 2016(10月19-20日:シンガポール)
キャピタルマーケットとウェルスマネージメント業界の祭典 TradeTech Asiaは、今年もシンガポールで開催されました。セレントは長年、このイベントのカンファレンス・チェアやモデレータを務めてきました。ウェルスマネージメントにおけるロボアドバイザーの台頭、トレーディングデスクにおけるAlgoからAIへのシフトが鮮明だった2016年は、アジアの機関投資家の方々と、以下のパネルに参加しました。
All Star Panel: How can you use machine learning and artificial intelligence for predictive analysis and accurate analytics?
当日は、セレントのAIフレームワーク:人口知能モデルを披露し、資本市場、資産運用ビジネスにおける、AI活用の現状と展望に関して、以下の事柄に言及しました。
- トレーディングライフサイクルの最適化におけるAIの役割
- 投資分析の予測能力や正確性を向上させるAIの適用方法
- リサーチ:投資分析やポートフォリオ分析におけるAI活用
- AIとコンプライアンス:不正取引の監視におけるAIの活用
- 購入か利用か、構築か?:AIにおけるフィンテック企業の可能性