スポンサードアクセスモデル:導入すべきか否か
Abstract
レガシーシステムおよびエコシステムの変革にあたっては、既存のビジネスモデルの見直し、イノベーションの推進、エマージングテクノロジーの利用を迫られます。セレントは、そうした状況では「スポンサードアクセスモデル」と呼ばれるビジネスモデルに優位性があると考えています。これは、取引プラットフォームをスポンサーである銀行を通じてバイサイドに提示できるようにするものです。
セレントの最新レポート「スポンサードアクセスモデル:導入すべきか否か」は、スポンサードアクセスの促進要因を分析し、バイサイドはどの商品にこうしたアクセスが有効であると考えているか明らかにしています。
銀行、プラットフォーム、バイサイドの金融機関がスポンサードアクセスを検討する背景には、一連の規制強化の動きがあります。具体的にはバーゼルⅢ、ボルカー・ルール、ヴィッカーズ報告、リーカネン報告書などによるエージェンシー取引推進の流れ、ドッドフランク法や欧州市場インフラ規制(EMIR )によるOTCデリバティブ取引に対する規制強化の流れ、欧州の金融商品指令Ⅱ(MiFID II)をはじめとする世界的な透明性向上への流れなどが 挙げられます。
テクノロジーの導入によって組織内の縦割りおよび横割り構造が壊され、コスト削減やリターン向上といった効果をもたらす一方、バリューチェーンにおける金融機関の位置付けが変わり、サプライヤーとの競争を余儀なくされるケースもあります。スポンサードアクセスは変化し続ける市場構造に適応した仲介機能といえるでしょう。
OTCデリバティブの世界では、スワップ執行ファシリティ(SEF)という嵐によって新たに多くの取引プラットフォームの選択肢がもたらされ、現物債券市場では、取引電子化が長期トレンドとなったことで流動性の細分化が進んでいます。スポンサードアクセスにより、銀行はバイサイドに流動性を集中させることができ、自らの業務・リスク分析・コンプライアンス・報告体制を変えることなくシステム経由取引のコストを削減することが可能になります。
今後、持続的な流動性があり、集中指値注文台帳(CLOB)で取引される均質な金融商品の売買にスポンサードアクセスを利用する可能性があるのは、資産に制限のないヘッジファンドやアルゴリズム取引を手がけるアセットマネジャーでしょう。従来型のアセットマネジャーは主に金利スワップに取引を集中させるようになり、既存の取引管理体制に大きな混乱が生じるのを避けるため、リクエスト・フォー・クオート(RFQ)のような従来型アクセスを選ぶとみられます。
「世界の金利スワップ店頭取引売買高の58%はバイサイドが占めているため、業者間取引を手がけるディーラーにとって、仲介業者を排除することなくアクセスも確保できるスポンサードアクセスモデルは対外的にみても有効な手段といえるでしょう」とセレント証券グループのシニアアナリストでレポートを執筆したジョセフィン・ドゥ・シャズルネは述べています。
レポートでは、債券、為替および現物デリバティブのインターディーラー・ブローカー(IDB )取引、対顧客取引(D2C)および両方の取引モデルに関する最新情報も提供しています。