マイクロファイナンス市場における商業銀行の役割
Abstract
セレントの予測では、小規模融資市場の規模が2008年には200億米ドル(約2兆2,000億円)に達する見込みです。
セレントの最新レポート「マイクロファイナンス市場における商業銀行の役割」は、マイクロファイナンス(小規模融資)市場の分析と業界のステークホールダーに関する詳細な情報を提供しています。
マイクロファイナンスとは、低所得の起業家向けにマイクロファイナンス実施機関(MFI)が商品やサービスを提供する活動を示します。「マイクロファイナンス業界はいまだ揺籃期にあり、収益を上げているMFIは全体のわずか10%にすぎません。MFIの主な課題としては、利益の達成、能力の開発、商品・サービスの多様化、透明性の確保などが挙げられます」と、セレントのアナリストで本レポートの共同執筆者であるぺリン・フィオリーナは述べています。
一方、商業銀行がマイクロファイナンスに関するノウハウやテクノロジーを向上させ、ファンドの設立に広く関与し、能力の拡充に努めれば、この未開拓市場の要求に応える適任者となるでしょう。「マイクロファイナンス市場への参入を狙う商業銀行の数は増えており、実際に収益を上げています。たとえば、マイクロファイナンス関連の商品やサービスに特化するGrameen Bank は、98.95%という高い融資返済率を達成し、2005年は現時点で653万米ドル(約7億2,700万円)の純利益を上げています。このように、商業銀行にとってマイクロファイナンスはビジネスチャンスであり、新規顧客を獲得する手段にもなり得るのです」とフィオリーナは付け加えています。
商業銀行がマイクロファイナンスを手がける際のアプローチとしては、投資ファンドを設立するかファンドに参加する方法、銀行内に専門部署を設置する方法などがあります。「商業銀行とMFI間のパートナーシップの確立が、事業成功のカギを握るでしょう。パートナーシップを確立することによって、互いに経験、知識、責任を共有できるからです」とフィオリーナは指摘します。
最新の情報や通信テクノロジーを利用することによって、高収益性、商品・サービスの多様化、活動の強化などがより迅速に達成できます。また、インターネット接続に伴うMFIのコンピュータ化、MIS ( : Management Information System) の導入、会計ソフトの採用を通じて、透明性の向上が促進できるかもしれません。「透明性と利益主導型経営の実現は、マイクロファイナンス市場に個人投資家をひきつけ、それが高い返済率と収益性の達成にもつながるのです。マイクロファイナンス市場への海外からの資金流入額は、2002~2004年の2年間で300%増の178億米ドル(約1兆9,800万円)に膨らんでいます。この傾向は、MFIの透明性と経営責任のレベルが向上すれば、さらに加速するでしょう」と、レポートの共同執筆者でアナリストのアクセル・ピエロンは主張しています。
レポートでは、金融機関の地理的条件、組織、商品レンジ、予想投資利益などに応じたマイクロファイナンス市場への参入戦略を提言しています。
このレポートは10図と4表を含む37ページから構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年8月31日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。