中東欧保険市場におけるIT投資動向
Abstract
中東欧5ヵ国の保険会社による2004年のIT投資額は5億4,300万米ドル(約577億円)に達すると予測されます。向こう2年間の投資額は緩やかに延びる見通しで、2006年のITプロジェクト投資額は5億6,900万ドル(約604億円)にとどまるとセレントは予測しています。
中東欧5ヵ国とは、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニアを指します。これらの国では保険市場が急速に拡大し、利益も上がっています。各国の保険市場は、外資系を中心とする大手保険会社やかつての国営独占企業などごく少数のプレーヤーが支配しています。それ以外のプレーヤーは小規模な保険会社が多く、飛躍的な業務拡大は見込めない状況です。
これまで、中東欧の保険市場の潜在成長力はしばしば取り上げられてきましたが、その成長を支える(または阻害する)IT戦略課題や、新規開拓された中東欧市場で西欧のITプロバイダーが果たし得る役割については、ほとんど注目されることはありませんでした。
セレントの最新レポート「中東欧保険市場におけるIT投資動向」は、同市場の現在の事業環境、IT戦略上の主要課題、現在および将来におけるIT上の優先課題、全般的なIT投資動向などの概要を示しています。
「全般的に、これら5ヵ国のIT環境は比較的高度で、専門技術を備えた優秀な人材が確保し易くなっています。同時に、技術レベルが高いわりには、西欧に比べて人件費が安く済みます。したがって、価格と技術スキル可用度を踏まえた結果、多くのIT企業はベンダーソリューションの採用ではなく自社開発によるITソリューションの構築を選択しています」と、セレント保険グループのマネージャーでこのレポートの著者でもあるマシュー・ジョセフォウィッツは述べています。
一方、ベンダー市場は西欧の大手企業が支配する状況となっています。これらの企業の役割は、中東欧に進出した西欧系保険会社の本店とのビジネス関係に支援されています。また、少数ながら、地元ベンダーも市場に進出しています。保険業界向けシステムを専門とするこれらの地元ベンダーが生き残るためには、西欧の競合企業と提携するか、ニッチ市場に特化するかの選択を迫られるでしょう。
中東欧5ヵ国のIT投資は現在ほとんどが販売分野に集中していますが、市場の拡大が優先される現状では当然といえるでしょう。しかし、セレントは、これら5ヵ国の保険会社が長期成長を支える上で不可欠となるインフラ整備に十分な投資を振り向けていないという点で誤りを犯していると考えます。尚、中小プレーヤーの多くは、収益性向上を目指したIT投資に焦点を絞ることで、ニッチプレーヤー戦略を推進しています。
このレポートは11のグラフと6つの表を含む全25ページで構成されています。
米ドルから日本円への換算レートは、2004年10月29日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。