顧客確認(KYC)ユーティリティモデルの最新動向
Abstract
資本市場におけるユーティリティモデルの採用は新たな現象であり、金融機関の業務執行方法を大幅に変える可能性を秘めています。顧客確認(KYC)の分野に最近投入されたユーティリティには、業務の再設計を検討している複数の市場参加者が強い関心を示しています。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | KYCユーティリティモデルの採用は進んでいるか? |
2 |
ユーティリティモデルは銀行の顧客オンボーディングシステムにどのような影響を及ぼすか? |
3 | ユーティリティモデルが幅広く普及すれば、KYCソリューションのプロバイダーはどのような影響を受けるか? |
本レポートは、顧客確認(KYC)業務を対象とする複数のユーティリティソリューションの進捗状況を明らかにし、昨年11月のレポート「顧客確認(KYC)オンボーディングソリューション:ユーティリティモデルの登場」以来、市場参加者から寄せられていた多くの質問に対する答えを示すものです。
これまでKYCユーティリティのプロバイダーは、米国と英国で可能な限り広範なバイサイドの顧客オンボーディング業務に対応することに注力してきました。近い将来、他の地域および国の金融機関にも広げることを目指しています。セルサイドによる採用はまだ一部に限られていますが、セルサイドの金融機関の多くは、ユーティリティが社内業務にどのような影響を及ぼすか、異なるユーティリティ間でどのようなやりとりが可能なのか、圧倒的な勝者となるユーティリティが出てくるのか-などについていまだ状況を見極めているとみられます。
業界全体の視点でみると、同一の機能のユーティリティがいくつか投入されるのが最善といえますが、市場参加者の中には競争を促して市場の独占を防ぐ方が良いと考える向きもあります。ユーティリティが成功するためには、様々なタイプの顧客を最終顧客として獲得し、複数の国や地域の法令に対応することがカギとなるでしょう。
「KYCユーティリティを導入すれば情報および文書の収集・管理の問題は解決できますが、銀行が行わなければならないKYC関連業務はこれだけではありません。ユーティリティがフル稼働すれば、これまでKYCソリューションを手がけていたプロバイダーの役割は変わらざるを得ません。中には、既にユーティリティ関連の新製品の開発に着手したところもあり、ユーティリティと戦略的なパートナーシップを結ぶ検討をしているケースも見られます」とセレント証券プラクティスのアナリストでレポートを執筆したアリン・レイは述べています。
レポートでは、市場参加者にとっての最優先課題を詳しく説明し、KYCユーティリティの現状を紹介、また、これらのユーティリティが今後どのように進化し、共存していくことができるのかを予測し、それらがKYC業務だけでなくユーティリティモデルの採用が見込まれる他の分野にどのような影響を及ぼすのか予想しています。