タイの保険市場とIT投資の概要
Abstract
タイの保険市場は小規模ながら、アジア太平洋地域では中国、インドに続く急成長市場の1つに挙げられます。セレントは、同市場のIT投資額が2013年末には15億ドル(約1166億円)に達すると予想しています。
セレントの最新レポート「タイの保険市場とIT投資の概要」は、タイの保険市場の成長について取り上げています。レポートは、生命保険と損害保険の両分野について販売チャネルやIT投資の現状を明らかにしています。
タイでは、生保・損保とも主にエージェントが販売窓口になっています。とはいえ、銀行窓販など他の販売チャネルの追い上げも急ピッチで進んでいます。同国の保険会社は1995年には12社でしたが、2009年には24社に倍増しました。保険市場には外国人の持ち株比率、自己資本比率、ソルベンシー・マージン比率といった参入障壁があるため、今後数年間は保険会社間で吸収・合併の動きがみられるでしょう。
タイの生命保険市場は寡占化が進んでおり、トップ5社が市場シェアの70%近くを占め、残りの30%をめぐって19社がシェア争いを繰り広げています。
一方、損害保険市場の規模は28億ドル(約2177億円)で、生命保険市場(95億ドル、約7386億円)の4分の1程度にとどまっています。2009年には金融危機のあおりを受けて伸び悩みました。損保市場は細分化が進み、市場参入している保険会社は71社に上っています。トップ5社を合わせたシェアが全体の40%近くを占め、40以上の保険会社は市場シェアが1%にも達していません。
「タイでは若年層の人口が急増しており、投資目的や退職金関連の保険商品のターゲット層として期待されています。こうした商品に加え、既存の社会保障制度の不備や個人向け医療保険に対するニーズの拡大がタイの保険市場の主な成長エンジンとなるでしょう」と、セレントのアナリストでレポートを執筆したプラティマ・ラジャンは述べています。
タイの保険会社による2009年のIT投資額は4億1,300万ドル(約321億円)と推計されます。金融危機のあおりを受け、2010年の投資分野は既存システムの保守・管理に限定されましたが、2011年は既存システムが対応できる商品の拡大やプロセスの改良など、特定業務に絞った投資が行われる見通しです。