FRTBとリスク管理のルネサンス パート2:スマートITとトランスフォーメーション
Abstract
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | テクノロジー計画とソリューション実装を成功させるために検討すべき事項は? |
2 |
銀行がFRTBの順守にとどまらず、長期的なビジネスケースを構築するために検討すべき要因は? |
3 | トランスフォーメーションにつながる真のチャンスはどこにあるか? |
「トレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)」関連のプロジェクトは初期の定量的作業の段階から実際の設計・実装段階に移行しており、フロントオフィス、リスク、IT、市場データ業務の様々なステークホルダーを結び付けるためには、戦略的および戦術的に互いに絡み合わせるアプローチが必要となります。
金融機関がシステムの「自社開発か購入か」を選択するにあたっては、段階を通じて一貫性のある実装計画を策定しなければなりません。その際には、FRTBが目指すものと将来のビジョン、自社開発か購入かの選択、実装のしやすさ、成果が出るまでの期間、総所有コスト、さらには業務および変更管理に及ぼす影響などを考慮する必要があります。
FRTBを順守するためには規制関連投資が避けられませんが、先進的な金融機関はこれをチャンスと捉え、フロントオフィス、リスク、財務および市場データ業務のステークホルダーが連携してビジネスに有意義なものを生み出す機会にしようとしています。FRTBの単なる遵守ではなく、もっと上を目指すには、ビジネスケースを投資の様々なパーツに適用する規律あるアプローチを取る必要があります。RFPに回答したスケジュール、コスト、取り組みに基づいて、ビジネスケースの目標、制約、前提が変化していないか、進捗状況を常にモニタリングすべきでしょう。
今後FRTBが金融機関を誘導しようとする方向性は、①十分なデータとアナリティカル・サプライチェーンを基盤にビジネスおよびリスク管理能力をより強化する②「フロントからバックオフィスまで共通の」情報を提供する―というもので、最適な取引、リスクに基づく価格設定、ガバナンスを可能にするサービスとプロセスの共有です。同時に、次世代テクノロジーを開拓することで、金融機関は業績向上、コストの効率化、将来に備えたリスク関連IT投資の実現が可能になるでしょう。
「市場リスク管理における新たなルネサンスの幕開けを迎えつつあるといえるでしょう。そして、銀行業界が徹底的な見直しの時期に来ていることは間違いありません。今後数年に施行されるFRTBの重要規定は、2020年およびそれ以降の金融機関のビジョンを左右することになるでしょう。FRTBの順守という複雑な作業を成功させるためには、ソリューション実装と社内開発/購入の判断を正しく行い、プロジェクト管理を適切に執行することが最優先の課題です」と証券プラクティスのリサーチディレクターであるキュビラス・ディンは述べています。