中東および北アフリカにおけるイスラム金融
Abstract
イスラム金融は世界の金融業界での存在感を高め ており、現在300以上の金融機関がイスラム諸国や国際市場に参入しています。イスラム金融の預かり資産は全世界で6,000~6,500億米ドル(約 59~64兆円)に上ると推計され、ここ10年間は年率10~15%のペースで増加しています。
イスラム金融のサービスを提供する金融機関の数とその預かり資産が圧倒的に増加しているのは中東地域です。中東は最も発展したイスラム金融市場の1つであ り、総資産は2,558億米ドル(約25兆円)超に達しています。しかし市場の発展状況は国によって差があり、サウジアラビアとクウェートがほぼ成熟段階 に達しているに対してその他の市場はまだ成長段階にあります。
トルコでは銀行市場に占めるイスラム金融の割合が 3.3%となおニッチ分野にすぎないことから、成長性は最も高いといえるでしょう。同国では今後もイスラム金融の資産が拡大を続け、2010年には銀行の 預かり資産全体の5.1%を占めるとみられます。実際、セレントが調査対象とした国ではイスラム金融の資産は従来の銀行資産を上回るペースで拡大していま す。
イスラム系銀行やイスラム金融の商品を手がけるかイスラム圏に支店を持つ一般の銀行にとって、北アフリカ市場も事業拡大が見込まれる市場といえるでしょう。エジプトやアルジェリアを初めとする北アフリカは規模が大きくいまだ未開拓の市場です。
「イスラム金融は一般に極めて収益性が高く、ビジネスとして魅力的です。また、大手イスラム系銀行は一般の銀行に比べて金融危機による影響が小さいのが現 状です。ただ、中東では銀行間の競争が激しくなっており、新規参入を目指す銀行にとっては北アフリカ市場の方が魅力的でしょう」と述べるのは、セレント銀 行プラクティスのアナリストでレポートを執筆したペリン・フィオリーナです。
本レポートは、中東と北アフリカの2つの主要市場におけるイスラム金融の実情を分析しています。イスラム金融商品の定義を示すほか、主な市場参加者のイスラム金融の事業規模や成長性を検証しています。
本レポートは44図と9表を含む全52ページで構成されています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2008年10月31日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。