日本の証券業界のIT投資動向:市場の回復がIT投資増加の牽引役
Abstract
(このレポートは2005年11月21日に"IT Spending in the Japanese Securities Industry"というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2005年12月21日に発行しました。)
日本の株式市場は力強い回復を続けており、ここ2~3ヵ月は売買高の最高記録を繰り返し更新しています。 国内証券各社は高収益を確保する一方、引き続き厳しい競争やコンプライアンス上の問題に直面しています。こうした市況の回復を背景に、国内証券会社のIT投資額は平成17年度末の3,003億1千万円から、年平均成長率10.5%で着実に増加し平成19年度には 3,664億5千万円に達する見通しです。
このところ日本の証券市場は活況を呈しています。過去数年間の不安定な回復の足取りから一転して、今年9月から10月にかけては売買高の最高記録が何度も更新されています。こうした市況の復活を背景に、証券各社とも9月期中間決算では増収増益を記録しました。セレントの最新レポート「日本の証券業界のIT投資動向」は、証券会社の収益性が回復する中、業務・規制上の圧力がIT投資の拡大を促しつつある現状について論じています。
証券業界では、オンライン証券や第三者の証券仲介業者(銀行その他の事業会社)といった新たな販売チャネルの出現を受けてビジネスモデルが変化しつつあり、伝統的な総合証券会社の市場での優位性が脅かされています。また、銀行や保険会社が個人投資家市場のシェア拡大を競ってウェルス・マネジメント型のマーケティング戦略を導入し始めるなど、証券業界は他の金融サービスセクターからの攻勢も受けるようになっています。一方、証券会社はホールセールでは、フロントオフィスにアルゴリズム取引などの最先端テクノロジーを採用し、 バックオフィスでは引き続きストレート・スルー・プロセッシングの導入を進めています。さらに、財務の透明性や事業継続計画に関する法律の施行を控え、近い将来には一連のコンプライアンス要件への対応も迫られるでしょう。
「日本の証券会社のIT投資は、市場の低迷期には収益性低下の影響で抑制されていましたが、市況回復に伴う収益の改善を背景に現在は増加に転じています」と、セレントアジアリサーチグループのマネジャーで本レポートの執筆者であるニール・カタコフはコメントしています。「証券会社は、競争力を強化し、市場回復がもたらすビジネス機会を最大化するためにも、新たなテクノロジーや商品への投資を拡大していくでしょう。」
レポートは、日本の証券業界におけるIT投資のトレンド分析に加え、業界構造の概要やリテール及びホールセール証券会社が抱える重要課題についても論じています。また、証券システムの国内大手ベンダーと各社の市場シェアも紹介しています。レポートの結論では、この先数年にわたり国内証券業界のITトレンドに影響を及ぼすと思われる緊急の課題について考察しています。
このレポートは、21図と1表を含む全31ページから構成されています。