中小企業向けバンキングの改革:パート2
人工知能の先導者
Abstract
歴史的に見て、中小企業向けバンキングは、サービス提供コストの削減と顧客エクスペリエンスの向上との間でトレードオフが生じるという課題がある。その結果、中小企業は十分なサービスを受けられないことが多い。だが、こうした状況はもう終わりを迎える。人工知能(AI)がトレードオフを緩和し、ハイタッチ技術を可能にするのだ。
中小企業向けバンキングは、多くのフィンテック企業や大手IT企業が従来の収入源に加え、新たな収入源の獲得に向けて先を争って参入していることからも明らかなように、ディスラプションの機が熟している。今後10年間で、中小企業向け金融サービスの勝者は今日の銀行とは違うものになるだろう。既に先導者は、顧客中心のアプローチを採用し、より容易な金融ワークフロー、シンプルでスマートなアナリティクス、実行可能な助言を提供することで、変革を達成しつつある。しかし、このような熾烈な競争環境の中で持続可能な競争優位を生み出すためには、銀行は段階的な変化ではなく、現状を打破する革新的な戦略を実現しなければならない。AIを大規模に活用して顧客サポートをカスタマイズし、高度な分析ツールと実行可能なインサイトを提供することで、完全に形勢を逆転し始めている銀行もいくつかある。こうした銀行は、基本的なAIアプリ(「Tell me」など) から先端アプリ(「Advise me」など)へと移行しつつある。
図:中小企業顧客のニーズの階層に応じたAIの提供
本レポートは、多くのバンカーが最も高い関心を寄せている「なぜ今AIなのか?」という質問に答えることから始める。次に、「中小企業向けバンキングの改革:パート1:エンベデッド・ファイナンスの先導者」で取り上げた行動への呼びかけを簡単に振り返る。続いて、いかにしてAIが中小企業向けバンキング事業の経済性を変えると同時に顧客のエンゲージメントも改善できるのかについて検証する。更に、稼働中のAIを紹介し、実例として会計ソフトの「Sage」と「Xero」の概略を説明する。最後に、中小企業向けバンキングのユースケースをサポートする3社の成熟したAI技術ベンダー、Creative Virtual、Kasisto、Personeticsと、新規参入企業のMonitの概略を紹介する。また、これらのベンダーのクライアントにおける成功事例もあわせて紹介する。