Abstract
「ダイレクト・インデクシング」という言葉は比較的新しいものだが、投資アプローチとしては決して新しい概念ではなく、セパレート・マネージド・アカウント(SMA)が数十年前からUHNW(超富裕層)や一部のHNW(富裕層)の個人を対象に採用していたアプローチである。この投資アプローチは、ゼロコミッション取引と端株取引に加え、アルゴリズム・ポートフォリオを構築する技術が高度化したことで新たな息吹が吹き込まれ、ウェルスマネジメント業界ではあらゆる資産規模の投資家にこのアプローチを提供できるようになった。ダイレクト・インデクシングは、主に次世代(ミレニアル世代およびZ世代)の投資家と、ウェルスマネジメント業界における社会的責任投資(SRI)への関心の高まりがもたらした、投資家のハイパーパーソナライズされたニーズといった需要を満たす魅力的な提案である。
ウェルスマネジメント業界がダイレクト・インデクシングを採用するという進化を遂げた背景には、2020年の活発なM&A取引があった。同年はBlackRockがAperioを10.5億ドルで買収したほか、Morgan StanleyもParametricを傘下に持つEaton Vanceを70億ドルで買収した。M&Aに加え、自らをダイレクト・インデクサーあるいはカスタム・インデクサーに分類している会社の運用資産(AUM)の伸びも大きな話題となった。
こうした買収やAUMの増加がトップニュースになったことで、ウェルスマネジメント業界ではダイレクト・インデクシングの未来を予言する声も出始めている。例えば、ダイレクト・インデクシングは「ETFキラー」、「グレート・アンラッピング」、「アドバイザーの次なる1,000億ドルの投資機会」と言われている。では、ダイレクト・インデクシングは本当にウェルスマネジメント業界における次なる目玉なのか。また、ハイパーパーソナライゼーションへの需要に応えることができるのか。もしそうなら、何がダイレクト・インデクシングの採用を促進する要因となり、何が障害となるのか。セレントは、ウェルスマネジメント業界がダイレクト・インデクシングにどのように対応しているのか、またダイレクト・インデクシングの特定の機能がどのように提供されるのか、提供の際に生じる課題が大規模な導入をどのように妨げるのかについて検証する。