データガバナンスの重要性:プラクティスの現状
Abstract
保険業界ではデータに関するプロジェクトがあちこちで進められています。ほとんどの保険会社は何らかの形でデータに関するプロジェクトを進めており、レポーティングツール、分析ツール、そしてこれらのツールを活用するためのデータベースの構築がその中心となっています。
多くの保険会社が事業成功の鍵としての価値をデータに認め始め、データガバナンスの付加価値を真剣に検討しています。データクレンジングから分析ツールの導入まで、データに関するすべてのプロジェクトの必要条件としてデータガバナンスを捉えている会社もあります。
本レポートでは、保険会社を対象に実施した調査に基づいて、保険会社がデータガバナンスをどのようにとらえ、どこを重点に投資を行っているか、そしてこれらのプロジェクトが価値をもたらしているか否かを検証します。
大多数の保険会社は、データを必要不可欠であると捉えているものの、データガバナンスはデータほどは重要と捉えられていません。過半数の保険会社はガバナンスを必要不可欠または非常に重要と回答していますが、正式なデータガバナンスプロジェクトを導入している会社は過半数に満たない状態です。
中小規模の保険会社では、大手の保険会社よりも管理制御できているデータの割合が多いという結果が出ています。大手の保険会社の場合はデータオーナーが数多く存在し、データ環境が断片化しがちであり、それと比較して中小の保険会社はデータガバナンスプロジェクトを全社的に導入しやすいのかもしれません。
保険会社にとって最大の課題はデータの迅速な収集と分析です。次に、細分化したデータ環境、そしてデータ品質が3つ目の課題となっています。これらの問題は互いに悪影響を及ぼします。つまり、データ環境の細分化はデータの迅速な収集を困難にし、データの品質の低下はデータの分析と活用に基づく意思決定を困難にします。
データの質向上プロジェクトは、保険会社に最大の価値をもたらします。データガバナンスチームの設置も有効で、多くの保険会社が一元化したデータガバナンスチームから価値を引き出しています。しかし、データの監査やデータガバナンスの測定基準を設けている保険会社は、ほとんどありません。
「データガバナンスは保険業界における新しい分野です。正式にガバナンスプロジェクトを実施している会社では、データの品質の問題が生じにくいようです。しかし、データガバナンスプロジェクトの導入にあたっては、企業カルチャーからの抵抗を克服しなければなりません。その主な理由は、データは共同で保有するものという意識、そしてビジネス部門は往々にしてデータイプロジェクトの価値を理解できないからです」と、セレントの保険グループのリサーチディレクターであるカーリン・カーナハンは述べています。
本レポートでは、データおよびデータガバナンスの重要性、データガバナンスのやり方、 社内におけるデータのオーナシップの典型例、課題、目標、そしてデータガバナンスプロジェクトの成功例について解説し、また、管理制御下にあるデータの量、組織内でのデータの共有方法、および一般的な顧客データへの影響も検証しています。最後に保険会社がガバナンスプロジェクトを推進する際に考慮すべき事項を示します。