アナリティクスによる顧客経験の変革:バンキング、ウェルスマネジメント、保険への適用
Abstract
「顧客を知ること(Know Your Client)」はいつの時代にも適用する原則ですが、今ほどこれがあてはまる時代もないでしょう。価格設定の透明性、カスタマイズされた商品、銀行とのやり取りをコントロールすることなど、顧客はより多くを求めるようになっているからです。
金融機関にとって、顧客が必要とするタイミングで適切な商品を提供し、コミュニケーションを効果的に行うことが成功への第一歩です。それらは、単なる商品ニーズや価格設定の選択肢にとどまりません。顧客が求めているのは、複数のチャネルで容易かつ適切な顧客経験が提供されることです。彼らはAmazonやNetflixで自分の好みにあった商品を勧められるように、銀行やフィナンシャルアドバイザー、保険会社からも同様のサービスを受けたいと思っているのです。
金融機関は、顧客を知るために必要なあらゆるデータを手にしています。クレジットカードの購入履歴や当座預金の取引明細といった記録を見れば、赤ちゃん用ベッドを購入したことや、大学の授業料を支払ったことなどがわかります。また、公開されているデータには、新居購入や結婚といったイベント、フェースブックやリンクトインでは生活の変化や新たな仕事に関する本人の投稿も見られます。
最新トレンドの1つに動的セグメンテーションがあります。これは、金融機関が複数のソースから大量のデータを取り込んで細かいセグメントを設定し、集中的なモデルを使って顧客行動の変化に合わせて顧客を動的にセグメント化するものです。
これは従来の予測分析より進んだ手法で、セグメンテーションを動的に行うことが新しい点です。そして、コグニティブ・コンピューティングやマシンラーニングを導入することで、金融機関は非常に細かいセグメントを設定し、顧客行動の変化に応じてそれらを迅速に変更することができます。
本レポートでは、金融サービスに高度な分析とコグニティブ・ラーニングを導入することで、顧客経験を変革できることを示しています。バンキング、ウェルスマネジメント、保険分野における実例を紹介し、そうした取り組みにいかに着手すればよいかアドバイスを提供しています。
「金融機関が高度なアナリティクスやコグニティブ・コンピューティングを導入すれば、デジタルチャネルへの人的介入が可能になり、対面チャネルの人員をサポートして多くの顧客に対応できるようになります。それによって、対面スタッフは顧客と最良の関係を構築し、顧客関係をめぐる判断に集中することができます」と銀行プラクティスのシニアバイスプレジデントでレポートの共同執筆者の1人であるダン・ラティモアは述べています。
「先進的な銀行、資産運用会社、保険会社は高度なアナリティクスとマシンラーニングをツールとして活用し、セールスおよびマーケティングを改善し、顧客経験を刷新する機会を模索しています。これらのツールを用いることで、金融機関は単に大量の演算や報告を行うだけにとどまらず、顧客のニーズを聞き、予測する能力を向上させることができます」とウェルスマネジメント・プラクティスのシニア・アナリストでレポートの共著者であるウィル・トラウト はコメントしています。
金融機関が幅広い顧客に対してこのレベルで関るためには、幅広いソースから構造化および非構造化データを取り込み、それらのデータをリアルタイムで大量に分析し、動的予測モデルを使って処理できるテクノロジーが求められます。そして、コグニティブ・コンピューティングを使って継続的に学習し、顧客行動をより正確に予測できるモデルが必要になるでしょう」と保険プラクティスのリサーチ・ディレクターでレポートを共同執筆したカーリン・カーナハンは指摘しています。