業務処理のクロスボーダー化とコーポレート・バンキングの産業化
Abstract
セレントの試算では、銀行はビジネスラインの全てを、低コストのオフショア拠点の業務処理センターの統合プラットフォーム上に移行することで、支払利息を除く営業費用を約16%削減することが可能です。
金融機関の国際的な業務拡大は、システム・アーキテクチャ、業務運営、リスク管理上の難題を引き起こしてきました。その結果として、銀行は自らの業務規模に見合ったスケール・メリットを享受できない状況にあります。セレントの最新レポート「業務処理のクロスボーダー化とコーポレート・バンキングの産業化」の見解では、業務処理センターのクロスボーダー化がこうした問題の解決やコスト削減に寄与する見通しです。
「ここにきて、業務体制やシステムを統合し、全世界の顧客をサポート対象とするセンターを通じてサービスを提供することで、国単位の組織を解体し事務処理のクロスボーダー化を図ろうとする銀行が増えています」と、セレントのアナリストでレポートの共同執筆者であるアクセル・ピエロンは述べています。
「コスト削減余地に関する試算では、低コストのオフショア地域を拠点とする業務処理センターのクロスボーダー化を図ることで、支払利息を除く営業費用を15%以上削減することが可能です。業務の集中化に伴うスケール・メリットがコスト削減分の約3分の1を占め、同60%強は、オフショア拠点というコスト優位性によるものです」と、セレントCEOで共同執筆者でもあるオクタビオ・マレンジが加えます。
「事業法人向け商品など一部の業務において、グローバルプレイヤーとしての地位を維持しつつ独自のサービスを提供することを望む銀行は、いずれは事務処理のクロスボーダー化戦略を採用するでしょう。銀行にとっては本格的な産業化のアプローチを採ることが、競争力と収益性を維持するために不可欠です」とピエロンはコメントしています。
しかし、異なるシステムを統合し、重複するアプリケーションを整理する作業は、高いリスクとコストを伴うものです。さらに、大部分のコンピュータ・プラットフォームでは、全てのシステムをリアルタイムで運用するだけの能力を備えてはいません。今求められているのは、ホールセール・バンキングシステムが統合されていないという現実を打破する方法です。
「最大の問題点は、一極集中型管理と地域分散型管理の間に生じる典型的な矛盾です」と指摘するのは、共同執筆者の1人でシニアアナリストのバート・ナーターです。「各地の銀行は常に自らに使い勝手のよいシステムを望み、ソリューションを支店網や地域に合わせて最適化しようとします。一方、銀行組織全体としては、全機構にわたる最適化を望みます。当然、両者の摩擦は残ります。こうした対立克服の優れた参考例として、シティバンクのCosmosシステム導入プロジェクトがあります。」
レポートでは、グローバル銀行における業務処理センターのクロスボーダー化を促す要因を検証しています。また、クロスボーダー化に最適な金融商品や、クロスボーダー化戦略の採用によってもたらされる利点(コスト削減など)と課題についても詳しく分析しています。
本レポートは15図と1表を含む全29ページで構成されています。