トレード・ファイナンスはリスクマ ネジメントからキャッシュマネジメントへ
Abstract
伝統的なトレード・ファイナンス業務は今や衰退の一途をたどっています。たとえ業務をインターネットに移行したところで何の解決方法にもならないでしょう。トレード・ファイナンスのソリューションは従来のような取引重視型からキャッシュ・マネジメント重視型への発展が不可欠といえます。
セレントの最新レポートは、国際貿易業務の定義を明確化したうえで、トレード・ファイナンス業務変革のための原動力や業界の動向について詳しく分析しています。
過去半世紀の間に国際貿易は劇的に変化しました。特に、サプライ・チェーン・マネジメントの導入によって一回の出荷あたりの金額が減少した結果、輸出入業務は著しく変化しました。国際貿易取引の平均出荷額をみると、2001年は1970年代の42%に減少しています。徹底したサプライ・チェーン・マネジメントによって在庫が減り、企業では「ジャスト・イン・タイム」方式に近い生産が可能となります。このような変化に伴い、信用状(LC)のような従来型システムではもはや現在の国際貿易業務の実情にはあまり対応することができなくなり、トレード・ファイナンス業務は大幅な変革を余儀なくされています。
「とはいえ、LCのネット化を可能にするe-LCなどというアプリケーションを開発したところで、まるで意味はないのです。今日、企業は運転資本管理の向上に注力していますが、貿易業務にはキャッシュというわなが伴うという問題点があります。」セレントのアナリストで本レポートの著者であるアクセル・ピエロンはこう述べています。
銀行業界では、顧客企業に新たなトレード・ファイナンス業務を提案するにあたり、3つの異なるアプローチが採られています。大多数の銀行は、業務の効率化やコスト削減を理由にトレード・ファイナンス業務のオンライン化に踏み切っています。その際には自前でソリューションを開発するか、業務をアウトソーシングする方法が採用されています。この結果、効率化やコスト削減、あるいは顧客のニーズへの対応は実現できたかもしれませんが、今日のトレード・ファイナンス業務を巡る課題を解決したことにはならないと考えられます。これでは、ロジスティクスのように個別のソリューションでは顧客のニーズに十分に対応しきれないサード・パーティのソリューションを採用するのと変わらないといえるでしょう。
「今日のトレード・ファイナンス業務においては、トレード・ファイナンスとキャッシュ・マネジメントの融合こそ顧客に付加価値を提供するサービスとなるのです。そのためには銀行自身の組織改革が不可欠なため、当然のことながら銀行にとって最も難しい課題となっています」と、ピエロンは指摘しています。
本レポートは17のグラフと1つの表を含む36ページから構成されています。