ヘッジファンドとプライムブローカーの新たな関係基盤:最適なITインフラの導入
Implementing the Right IT Infrastructure
Abstract
セレントは、ヘッジファンドとプライムブローカーの関係の変化の状況と、それがいかにプライムブローカーのITインフラの進化を促進しているかについて調査しました。なお調査にあたっては、ブロードリッジの協力を受けました。
セレントの最新レポート「ヘッジファンドとプライムブローカーの新たな関係基盤:最適なITインフラの導入」は、両者の関係に変化をもたらしている主なトレンドについて分析しています。さらに、こうした変化がいかにプライムブローカーのITインフラの進化を促し、競争力の高い差別化要因を生み出す付加価値サービスの提供に発展しているかを明らかにしています。金融危機を機に、資本市場参加者のリスク行動やリスク許容度は変化しました。リーマン・ブラザースの経営破綻によって650億ドル(約5.2兆円)に上るヘッジファンドの資産が凍結され、ファンドは主要プライムブローカーとの関係見直しを余儀なくされました。2007年以前から徐々に広まりつつあったマルチプライムブローカー・モデルを採用する機運が高まり、今や業界内ではベストプラクティスと考えられています。
マルチプライム・モデルの採用に伴い、ヘッジファンドでは特にデータ統合の負担が大きくなりますが、これはプライムブローカーによる最適テクノロジーの導入によって解決できます。ブローカーごとに異なるストラクチャやフォーマットを使って共通のレポートを作成し、ポジション・取引・残高の一元化を可能にするプラットフォームが必要になります。
また、マルチアセット戦略を導入するヘッジファンドも増えており、これに伴って複数の資産クラスのレポートやポジション記録をはじめ、クロス・マージニング機能に対するニーズも高まっています。「プライムブローカー向けプラットフォームの市場ではいまだシングルアセットソリューションが主流ですが、新たな資産クラスの拡大を求める顧客のニーズに合わせ、マルチアセットソリューションへの移行が確実に進んでいます。業界としては、全商品に対応可能な取引後処理を目指す必要があるでしょう」と、セレントのシニアバイスプレジデントでレポートを執筆したアクセル・ピエロンは述べています。プライムブローカーは、マルチアセット対応のプラットフォームを導入することで価値提案を拡大することが可能です。顧客が取引する幅広い資産に対応することで、「ワンストップショップ」としての機能を果たすだけでなく、顧客に担保およびリスクの管理機能を提供することも可能になるでしょう。
「プライムブローカーの顧客は、リアルタイムの処理および照会、日中の取引管理、リアルタイムの決済およびポジション照会などを求めています。マルチアセット/マルチマーケットの環境では、こうしたサービスは確かに難しいといえます。また、リスク管理においては、ポートフォリオのエクスポージャーやその他のリスク指標を正確に算出する追加的なツールが必要となります。従って、プラットフォームの機能はポジションの一覧や共通レポートの作成に限定されるべきではありません。カウンターパーティリスクへの懸念は払しょくされていませんが、主要プライムブローカーは優れた財務力と専門知識の高さを武器に市場シェアを回復しつつあります。この分野では、小規模プロバイダーに吹いていた追い風が弱まりつつあります。しかし、状況は変わる可能性があります。プロバイダー間の競争が激化する今、金融機関にとっては絶好の機会到来といえるでしょう。
注)ドルから日本円への換算レートは、2011年5月31日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。