プライベート・キャピタルの台頭:超富裕層、未公開株、非連動資産
Abstract
金融機関が非公開企業に投資しようとする場合、従来はプライベート・エクイティ・ファンドのリミテッドパートナーになるか、これを含むファンド・オブ・ファンズに投資するか、でした。しかし最近ではプライベート・キャピタル(未公開企業への直接投資)を利用する方法が出現しています。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 未公開株への投資を阻むテクノロジー面の制約としてどのようなものがあるか? |
2 |
プライベート・キャピタルの拡大は伝統的な株式市場にどのような圧力をかけるか? |
3 | 直接投資にはどのような戦略的メリットがあるか? |
本レポートはプライベート・キャピタルが伝統的なプライベート・エクイティ・ファンドをどの程度代替してきているか、ウェルスマネジメントを手掛ける金融機関が抱える課題、そのエコシステムへの提言を示しています。
未公開企業への直接投資がすぐに伝統的なプライベート・エクイティ投資に取って代わることはないとみられるものの、その役割が拡大すれば、富裕層の投資家や彼らをサポートするエコシステムにチャンスをもたらすでしょう。ちなみに、プライベート・キャピタルがプライベート・エクイティ・ファンドの管理下から解放されれば、現在の視点からではあまり見えてこない影響が四方に及ぶと考えられます。
その場合のネットワーク効果の1つとして、株式市場に対する認識が一新されること(未公開企業にとってはプラス効果だが、公開株式市場やIPOにはマイナス)が挙げられます。金利が上昇して資本の流れが細ると、伝統的な資金調達の序列が逆転します。その結果、経済全体にディスラプティブな影響が及び、資金調達を行う企業、機関投資家、ウェルスマネジャーなどにビジネスチャンスがもたらされるでしょう。
その一方で、既存のシステムアーキテクチャでは未公開株に対応しきれないため、テクノロジー面の制約が引き続き大きな障害となっています。ファミリーオフィスやその他のウェルスマネジャーが新たなリスク・リターン特性の認識(インサイダー情報と専門家の見識というメリットが優位性となる)に基づく直接投資を受け入れるなか、この問題の解決策を提供できるベンダーは優位に立つことができます。
短期的には、次世代テクノロジーの導入が成功のカギになるでしょう。そして長期的には、未公開株に対応可能な機能を備えたポートフォリオ管理システムが常識になるでしょう。システムの平準化が進むことで、競争上のメリットはツールや資本ではなく、ノウハウや知識の幅広さから生まれるようになるでしょう。
「市場や世界で勃発する出来事が顧客の投資機会の範囲にどのような影響を及ぼすか、また直接投資によっていかに低リスク・高リターンを実現できるか。こうした質問に答えられるアドバイザーは、報酬を割り増ししてもいいでしょう」とセレント証券プラクティスのシニアアナリストでレポートを執筆したウィリアム・トラウトは述べています。