運転資本管理における新展開分野のマッピング
Abstract
進取的な銀行は、伝統的な決済の担い手という役割から脱して金融サプライチェーンの自動化と統合におけるビジネスチャンスを探りつつあります。銀行は、事業法人顧客の運転資本を最大化できれば、次世代の財務商品やサービスで優位に立てるでしょう。
金融サプライチェーンの電子化は、段階的ながらも確実に進んでいます。ただし、それがどのような形で進展するのかはなお不透明であり、どのプレイヤーが支配的立場につくのかも予測できません。セレントの最新レポート「運転資本管理における新展開分野のマッピング」では、金融サプライチェーンの自動化・統合のトレンドおよびベストプラクティスのロードマップを提示しています。金融サプライチェーンの自動化と統合を進めるためには企業、テクノロジープロバイダー、銀行の三者による協力と連携が必要であり、レポートはこれら全てのプレイヤーと関連製品について論じています。
企業は、現行の金融サプライチェーンがこのまま続けられるわけではなく、余剰な運転資本を削減しなければならないことに徐々に気づき始めています。多数派ではありませんが、財務に革新的手法を取り入れている企業もあります。それは、世界的な大企業に限らず、ますます増えている中堅企業の中にも見られます。こうした革新的な企業は、取引銀行数とそれに伴う支払い手数料を削減する一方、自社の金融サプライチェーンの改善に取り組んでいます。
現在のところ、マップメーカーとしての銀行の役割は定まっていません。銀行は財務サービス分野の利害関係が大きく、従って電子金融サプライチェーンのマッピングにも深く関わっています。企業間取引(B2B)決済関連サービスは銀行の主な収益源で、業界での総収入は年間320~360億ドル(約3兆7,000億~4兆2,000億円)にのぼり、これはホールセール業務の収入の3分の1以上を占めています。しかし、現行の業務守備範囲では価格引き下げ圧力が増しつつあり、貸付金利に基づく価格体系や必然的に変動金利に基づく価格体系ももはや持続できない状況です。
「銀行に求められているのは、顧客企業の持つ多数の分断したシステムを自らが直接、あるいはパートナーを介して間接的に結ぶことです。これができない銀行はカストディや決済など収益性の低い業務の担い手に格下げされ、統合や情報関連ビジネスなどの高収益業務を他行に奪われることになりかねません」と、セレントの銀行プラクティスのマネジャーで本レポートの執筆者であるアレンカ・グリリッシュは述べています。「銀行が収入や利ざやの先細りを食い止め、新分野での地位を確保するためには、金融サプライチェーンの構築に取り組み、システム統合、ビジネス・インテリジェンス、電子決済などを通じて付加価値を提供していくほかないでしょう。」
セレントの予測では、今後グローバル企業はシステム統合、サイクルタイムの縮小、ルーティングの低コスト化などを基準に銀行の選別化を進め、10年後には取引銀行を5行以下に抑える見通しです。
本レポートは、電子金融サプライチェーンを巡るベストプラクティスの実例として、ABNアムロ、Avolent、JPモルガン、Treasury Services、U.S. Bank、Xign、マスターカード、ロッキード・マーティン・エアロノーティクス、Dieboldおよび保険会社1社を紹介しています。レポートは15の図表を含む全30ページから構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年10月31日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。