進化する日本のマーケット情報サービス
Abstract
(このレポートは2010年8月26日に"The Evolution of the Japanese Market Data Industry: Faster and More Diverse"というタイトルで英文で発表しましたが、日本語版を2010年12月2日に発行しました。)
資本市場の細分化や、バイサイドによるアルゴリズム取引、スマートオーダールーティング(SOR)や高頻度取引(HFT)の採用が進んでいるため、データ関連のニーズやイノベーションは2013年にかけて年率10%を超える高いペースで拡大し続けるとみられます。
日本のマーケット情報サービスは長い歴史を持っています。セレントの推計では、日本における2010年のマーケット情報関連投資額は約6億2,500万ドル(約542億円)に上るとみられ、このうち二次的データおよびツールへの投資額が5億2,800万ドル(約458億円)、外部委託費が約10%をそれぞれ占めています。
日本のマーケット情報サービスに関するケーススタディは、中国、インド、その他の新興市場などアジアの他の国々における今後の市場データの発展の青写真を予測する上で有用といえるでしょう。アジアは取引およびデータ管理において世界の他の地域に後れを取っていますが、東京証券取引所が新たに取引システム「アローヘッド」を導入するなど、追い上げを図っています。
セレントの最新レポート「進化する日本のマーケット情報サービス」は、日本のエンドユーザーの主なニーズ(および供給サイドからの対応)をはじめ、以下の点を明らかにしています。
- 資本市場の細分化が進み、バイサイドによる高度な取引手法の採用率も高まってきているため、情報ベンダーがROIの向上を図るためには、新たな取引場(trading venue)を追加するためのプロトコルやコストの標準化が必要になる(これはデータフィードのアップグレードや変更にも当てはまる)。
- バーゼルⅡや国際財務報告基準(IFRS)などの導入により、当局への報告をより詳細かつ頻繁に行うことが義務づけられるため、正確で完全なデータ(‘golden copy’)に対するニーズが高まる。バイサイド・セルサイドとも、ベンダーがデータの質および正確さを期すことを望んでいる。
- 日本ではOTCデリバティブ取引の売買高が増加しているが、それに伴い、国内外のファンドは時価評価の難しい複雑な金融商品に関する外部の検証可能な価格データを求めるようになってきている。あるバイサイドの大手外資系金融機関のデータ管理者が指摘するように、「資産価値の正確な評価」が不可欠になっている。
- データ管理者はまた、コストの最適化という観点から、データ利用の効率性を高めるためユーザーや業務部門ごとにデータ利用状況を把握する機能も重視している。
- CTOやCIOは拡大するデータ関連ニーズに限られたリソースで対応しようとしており、外部委託による比較的安価なソフトウェアやエンタープライズデータマネジメント(EDM)ソリューションといったサービスの利用も広がっている。
出典:セレント
「日本およびアジア地域では、現地ユーザーのニーズに対応するための言語能力、サポートおよび規制対策が重要であり、現地化とカスタマイズ化がエンドユーザーをターゲティングする際の決め手となります」とセレントのアナリストでレポートを執筆したシャーメイン・リーは述べています。
このレポートは20図と2表を含む36ページで構成されています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2010年7月31日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。