米国株式市場の現状と今後のトレンド
Abstract
セレントは米国株式市場の最新動向を分析し、米国証券取引委員会(SEC)によるNMS規制(国内市場システムに関する規制)施行のもとで市場参加者の明暗がどのように分かれるか予測しました。
米国の株式市場は巨大であり、桁外れな活力に満ちています。その市場における立場を問わず、企業は今、テクノロジーがもたらすビジネスモデルの変化への対応に苦慮しています。NMS規制草案が承認され、ニューヨーク証券取引所(NYSE)によるハイブリッド・システムの導入が実現すれば、同市場の様相は一変するでしょう。
セレントの最新レポート「米国株式市場の現状と今後のトレンド」は、同市場の現状をわかり易く説明しています。レポートでは、米国株式市場の構造、主な市場参加者、競争、最近の動向および今後の展開について論じています。主な市場参加者としては、取引所、ECN(電子証券取引ネットワーク)、マーケット・メーカー、スペシャリスト、ブローカー、アグリゲーター(複数の投資家の注文を取りまとめて売買サービスを行なう仲介業者)、ブロックトレーディングのプラットフォームなどを挙げています。さらに、スペシャリスト、ECN、取引所の経済モデルについて、それぞれ収益ドライバーや今後の課題に主眼を置いた分析を行なっています。
セレントは、NMS規制の施行は、市場に勝者よりも多くの敗者を創出すると確信しています。ブローカーディーラーは市場データ関連ビジネスの分野で恩恵を受けるでしょうが、ECNにとって市場改革はプラスに働くというよりもむしろマイナス影響の方が大きいでしょう。一部のITベンダーやNYSEもまたリスクに晒されています。下表は、NMS規制による影響を市場参加者別にまとめたものです。
NMS規制のもとでの勝者 | |
大手ブローカーディーラー |
市場データの販売が可能となり、新たな収益源が生まれる。SIP(Session Initiation Protocol)によるデータフィード料金が低下すれば、市場データコストが大幅に削減される。 |
ECN |
トレード・スルー規制の改正によって上場銘柄の注文取引における競争力が増す。 |
NMS規制のもとでの敗者 | |
ECN |
小数点以下の値がつけられなくなり、差別化要因がなくなる。主な収益源であるアクセス料金の上限が設定され、収入の頭打ちが避けられない。また、流動性に応じたリベートの付与ができなくなり、オーダーフローが低調となる恐れがある。 |
NYSE |
さらに発展する市場としての評価を得るためには市場構造の変革が避けられず、従来の取引モデルが崩れる恐れがある。 |
フロア・ブローカー/スペシャリスト |
取引所の電子化によって取り残される可能性が高い。 |
スマート・オーダールーティング・ベンダー |
トレード・スルー規制の拡大によってルーティングの選択肢が限定されることから、こうしたシステムに対する需要が減退する。 |
ブロックトレーディングのプラットフォーム |
「フェアアクセス」の基準が変わることで「望ましくない」顧客の受け入れを余儀なくされる可能性がある。 |
出所: セレント・コミュニケーションズ |
セレントのアナリストで上記レポートの著者でもあるジョディ・バーンズは次のように述べています。「NMS規制は2005年半ばまで実現しそうもありませんが、同規制による改革は米国株式市場に多大な影響を及ぼす見通しであり、その重要性は計り知れません。これによって、市場撤退に追込まれる企業や、買収による生き残りを迫られる企業が出て来るでしょう。」
このレポートは、16のグラフと4つの表を含む全37ページから構成されています。