リスク管理の将来像を考える:最終的な成功を勝ち取るために【全訳版】
Executing to a Successful End Game
Abstract
このレポートは2013年11月11日に"Perspectives on the Future of Risk Management: Executing to a Successful End Game" というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2014年3月27日に発行しました。)
金融機関は、テクノロジーによるイノベーション実現のチャンスを逃すべきではありません。金融機関は、千歳一隅のチャンスを迎えています(見方によっては、滅多にない脅威かもしれませんが)。本レポートは、不安定な市場環境、規制強化、トランザクション処理の進化に対応するため、金融機関がリスク管理業務の見直しを進めている現状を明らかにしています。
さらに広く見れば、金融業界は急速に多角的になりつつあります。その背景として、資本の制約、規制当局や投資家からの高いレベルの説明責任の要請、収益目標達成のためにビジネス戦略の転換という複雑な作業を強いられていることが挙げられます。各金融機関は、最適な担保構成の実現、資金調達コストの低減、カウンターパーティリスクの管理、競争上の優位の確立を達成すべく格闘しています。
「金融ビジネスのチャンスと脅威はリスク管理業務と表裏一体であること、つまり資本や信用取引の委託保証金のほか、自社が行う取引、取引相手、取引の方法、決済ベニューなども切り離して考えられないことは、市場参加者の共通の認識になっています」と、セレントのリサーチディレクターでレポートを執筆したキュビラス・ディンは述べています。
金融機関がリスク管理システムを強化または新規導入する際、次世代テクノロジーの採用と本格的なイノベーションは並行して、あるいは初めから進むものではありません。そういった状況の中、問題なのは、金融機関はスケジュール設定や報告義務が厳格なコンプライアンス主導のプロジェクトに気を取られ、テクノロジーによるイノベーション実現の可能性を逃す可能性があることです。
「『高度な分析』『リアルタイム』『エンタープライズリスク一覧』といった流行の用語を使うことは簡単ですが、これらの要素を戦略的に導入してイノベーションを実現するのははるかに難しいことです」とディンは指摘しています。
今回の調査はSAPの委託を受けてセレントが独自に行ったもので、金融機関の経営幹部が今後のリスク管理業務のあるべき姿をどのように思い描いているかを理解し、金融機関がいかに戦略を策定すべきかについて認識を共有することを目的としています。