証券取引処理の現状と展望
Abstract
ここ数年、証券取引処理を手がける業界は世界経済の混乱や不安定な資本市場に悩まされてきました。また、金融危機の発生以降、業界内では再編の動きも進行し、競争から脱落するプレーヤーも出てきています。
セレントの最新レポート「証券取引処理の現状と展望」は証券取引処理の現状を分析し、取引処理のニーズに対する業界の取り組みが進化しつつある状況を明らかにしています。金融危機による影響に加え、市場のアプローチもより高度化しており、同じ会社内でも地域や資産クラスによって処理方法が異なる場合があります。選択肢の多様化に伴い、その開発にあたってはテクノロジーがカギとなっています。
規制上の主な課題としては、米国におけるドッド・フランク法や欧州における欧州市場インフラ規制(EMIR)の影響などが挙げられます。アジアでは、司法管轄の違いを利用した裁定取引や規制の細分化などが大きな課題となっています。世界の主要市場のうち、今後数年間に清算・決済収入の最も大きな成長が期待されるのはアジア太平洋地域でしょう。一方、「Target2-Securities(T2S)」の導入と相互運用が予定されている欧州は、収入が伸び悩むとみられます。北米は重要市場としての地位を維持し、中南米市場もクリティカル・マスに達する見通しです。
「証券取引処理の市場は競争が激しい上、利益率が小さいため、規模の大きさがカギとなります。そのため、現在この業界では再編の動きが進んでいます」と、セレントのシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。
レポートでは最初に証券会社の数と収入を示し、決済業務の委託をめぐる最新の動きを明らかにしています。次に、ブローカー・ディーラーが採用している様々な決済の仕組みを紹介し、世界の主要市場における決済業務の社内処理と社外委託の割合を比較しています。さらに、バックオフィスの処理業務が抱える手続き上の課題を取り上げ、決済業務を受託するプロバイダーの現状にも焦点を当てています。最後に、欧州におけるT2S導入をはじめとする、最近の規制の動きについて説明しています。