日本の保険市場とIT動向の概要
Abstract
(このレポートは2005年7月28日に"Insurance in Japan: Market and IT Overview"というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2005年9月9日に発行しました。)
日本の保険市場では、国内保険会社が業績拡大に苦戦する一方、外資系保険会社は積極的にシェアを伸ばしています。外資系保険会社の保険料収入は現在市場全体の21.6%を占めていますが、2009年にはさらに26.2%に拡大するでしょう。
世界第2の経済大国である日本には、大規模で、極めて成熟した金融サービス業界が存在しています。こうした特徴は保険市場にも言えることですが、同市場は何年間も低成長期にあります。しかし、保険各社はこのような状況にただ手をこまねいてきた訳ではありません。ここ数年は、大手・準大手を巻き込んだ保険会社同士の合併が相次ぐ中、市場ニーズの変化に対応した新商品が次々と市場に投入され、新たな販売チャネルやマーケティング戦略の導入も進んでいます。セレントの最新レポート「日本の保険市場とIT動向の概要」は、この重要市場の概要を示すとともに、国内および外資系保険会社の組織上の問題やIT関連の課題を俯瞰しています。また、今後発行するレポートでは、業界内の競争やソフトビジネスの環境に関する戦略的対策など、同市場の特定分野に焦点を当ててさらに詳しく検証したいと思っています。
成熟市場である日本の保険市場の規模は、保険料収入ベースで現在およそ約35兆7,112億円です。今後は2009年には約38兆5,056億円まで漸増していく見込みです。また、業界では平均して保険料収入の約1.7%を IT投資に振り向けている試算です。ただ、その投資水準は分野間で大きく異なります。すなわち、損害保険各社が保険料収入の平均2.5%をIT投資に充てているのに対し、生命保険分野においては同1.5%と低い数字です。セレントの推計では、2005年の国内保険業界全体のIT投資総額は約5,999億円ですが、 市場の成熟度やコスト圧縮化傾向を考慮すると今後の伸びは小幅で、2008年度の投資額は6,345億円程度にとどまるでしょう。
「日本市場に進出している外資系保険会社は、社会の高齢化に伴う市場ニーズの変化に巧みに対応する一方、これまでと替わる販売チャネルや積極的なマーケティング手法の活用にも成功しています。国内保険会社がこうした外資系の攻勢に対抗するためには、革新的な商品や変化に効果的に対応できるITインフラを開発することが不可欠です」とセレントのシニアアナリストでこのレポートを執筆したニール・カタコフは述べています。
国内保険会社にとって最大の課題は、柔軟性に欠けるレガシーシステムをベースとするIT環境下で、変化を続ける厳しい競争市場を勝ち抜いていくのに必要な柔軟性とスピードをいかに確保するかということです。そのためには、成熟したITインフラの機能を拡充する最新テクノロジーを戦略的に導入し、商品の改革、マルチチャネル販売、多様な販売ネットワーク、サードパーティの商品提供業者などを効果的にサポートしていくことが求められるでしょう。
このレポートは12の図表を含む全19ページで公正されています。