CIOの新たな責務
REPORT PREVIOUSLY PUBLISHED BY OLIVER WYMAN
Abstract
スマートフォン、クラウド・コンピューティング、ソーシャルメディア、センサーやIoTの普及に伴い、ここ5年間でITを取り巻く環境は劇的に変化しました。デジタル化が進み、新たな競合相手が影響力を増すなか、変化のスピードはさらに加速しています。既に起こった「ディスラプション」への追従では、デジタルネイティブ世代のニーズや、急速にデジタル化を進める競合他社から遅れを取るばかりです。この現状から脱却したいのなら、「明日のディスラプション」に向けた準備を進めなければなりません。
2020年にデジタルの世界がどうなっているのか誰にもわかりません。しかし、今日使われているオラクルやマイクロソフト、SAPのレガシーシステムが、あっという間に過去のメインフレームになりつつあることは分かっています。そして、新たなテクノロジーが伝統的な業界に抜本的なディスラプションを起こし、全く新しいカテゴリーを生み出し続けていくことにも、我々は既に気づいています。ITを刷新し、業界全体のデジタル化の流れについていかなければ、生き残れないのは明らかです。
ではCIOはどうすればよいのでしょうか。すぐにレガシーシステムをなくすことはできないため、安定かつ堅牢な(ただし古びゆく)システムを維持し続けなければなりません。同時に、未来志向でデジタルなアジャイル型ITインフラの構築を推進する必要もあります。従ってCIOは、2つの異なるスピード感でITインフラを開発し、保守管理し、そして運用しなければなりません。
この作業を複雑にしているのは、これまではCIOがITに関する唯一のステークホルダーだったのに対し、今やIT機能は組織内の幅広い部門に分散し、デジタルテクノロジーが商品・サービスの開発や販売に深く根付いているため、あらゆる企業が事実上ソフトウェア企業のようになっていることです。さらに、企業によっては、CIOのほかに、チーフ・デジタル・オフィサー、チーフ・イノベーション・オフィサー、チーフ・サイエンス・オフィサー、チーフ・データ・オフィサーなどを置いているかもしれません。
こうした状況を踏まえると、CIOの地位と権力は脅かされつつあると言えるでしょう。1つ懸念されるのは、CIOが「パイププロバイダー」として軽んじられ(「チーフ・インフォメーション・オフィサー」ではなく「チーフ・テクノロジー・オフィサー」と見なされる)、レガシーテクノロジーの砦として進歩を遅らせている根源だと見られることです。もう1つのリスクは、CEOが、トッププレーヤーに追いつくためにデジタルテクノロジーに特化する2人目のCIO「ファストIT 担当CIO」を任命する可能性がある点です。CIOが自身の役割を維持するためには、自らの手で業務アジリティの変革を目指すべきです。