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欧州株式市場の代替取引システム

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2007/06/18

Abstract


金融商品市場指令(MiFID)の施行といった起爆剤があるにもかかわらず、欧州では代替取引システムによる売買高の増加は期待できないでしょう。欧州市場では取引執行の選択肢が広がってはいますが、従来の株式取引所からの資金流動はなかなか進まないでしょう。

欧州では株式取引の執行場所の選択肢が既存の取引所以外に広がっています。しかし、代替取引システム(ATS)の未来は市場参加者の多くが思い描くほど明るいものではありません。MiFIDの施行を機にATSの売買高が増加するとの市場コンセンサスは楽観的すぎる、とセレント最新レポート「欧州株式市場の代替取引システム」では指摘しています。

欧州では、ATSの市場参入が相次いでいます。ATSは、クロッシング・ネットワーク、リミット・オーダー・ブック、呼値要請(RFQ)サービス、さらにはネゴシエーションツールなど多岐にわたります。また、匿名性を持つ流動性資金の多くは、米国から欧州に流入しています(ITG PositやLiquidnetなど)。代替取引モデルを採用している最先端のリミット・オーダー・ブックには、インスティネットのChi-X(英国)、TradeCrossのWETRA(ドイツ)などがあります。Project Turquoiseについては、計画は発表されたものの、いまだ詳細は確定していません。

「今までのところ、ATSが欧州の株式取引に与えた影響は極めて限定的でした。欧州の取引所では成熟した電子リミット・オーダー・ブックが既に存在しており、それがATSの欧州市場への参入における大きなハードルとなっています。」とシニアアナリストでレポートの共同執筆者、デビット・イーストホープは述べています。 ATSを立ち上げる試みは特に英国(次いでドイツ)で盛んに行われてきましたが、どれも十分な注文フローを確保できていません。セレントの予測では、欧州株式市場全体に占めるATS取引の割合は2011年時点で5%程度にしか達しない見通しです。

「MiFIDの施行がATSによる売買高を劇的に増加させるとの見方が喧伝されています。確かに、取引の市場集中化が義務付けられている国々ではMiFIDの施行によりATSの普及が促進されていますが、そうした規制のない英国やドイツではATSの普及は進んでいません」と、セレントのCEOでレポートを共同執筆したオクタビオ・マレンジは述べています。しかし、MiFIDの施行後、ATSは流動性と匿名性という2つの特性を武器に、徐々にその地位を確立していくだろうとセレントでは予想しています。ただし、ATSが欧州で市場シェアを獲得するためには、運用システムの開発、ユーザーアクセスの確立、決済体制の整備、流動性の確保など、様々なハードルをクリアする必要があります。

本レポートは13図と6表を含む全41ページで構成されています。