施行から2年経ったMiFID:後戻りできない株式市場
Abstract
欧州ではMiFID(金融商品市場指令)が施行されてから急速に変化し、不透明な経済環境下で取引所の競争が加速しています。欧州の株式取引における取引所のシェアが2008年1月の72%から2009年4月は67%に低下する一方、MTF(取引所外取引施設)のシェアは同期間に1%から7%に拡大しています。
セレントの最新レポート「施行から2年経ったMiFID:後戻りできない株式市場」は、2007年11月のMiFID施行後の欧州株式市場の急激な変化を明らかにしています。迅速かつ割安なサービスを打ち出すMTFの攻勢で市場競争が熾烈化し、ロンドン証券取引所(LSE)など既存の取引所やOTC取引市場は市場シェアを死守しようとこれに対抗しています。顧客の立場からみると、MiFIDの施行に伴い執行価格の低下や価格決定の確実性、さらにはシステムの高速化などの面で選択肢が増えたといえるでしょう。
既存の主要取引所の多くは国内市場で大幅にシェアを失っており、特にユーロネクストやXetraなどは苦戦を強いられています。LSEは国内でのシェアは縮小したものの、欧州市場でのシェアは維持しており、海外市場での地位を強固にしています。また、一部のMTFはシェア拡大に成功していますが、ダークプールはニッチ市場をターゲットとする上、規制面での透明性に欠けることもあって伸び悩んでいます。セレントは、ダークプールを含む既存のMTFのうち2012年までシェアを維持することができるのは約半数にとどまると予測します。
「代替取引システム(ATS)にとって、変化に対応していくことは容易ではありません。MTFは競争が激化する市場での収益拡大を目指しており、最終的に勝ち残るのはごく少数に限られるでしょう」と、セレントのシニアバイスプレジデントでレポートの共同執筆者であるアクセル・ピエロンは述べています。
出典:セレント
株式市場における成功を受け、MiFIDの適用対象範囲はさらに拡大される見通しです。「MiFIDが債券や外国為替など他の資産クラスにも適用されれば、欧州全体でこれらの市場における取引の効率化が進むでしょう」とセレントのアナリストで共同執筆者のアンシュマン・ジャスワルは指摘しています。
レポートの第1項では、MiFIDが欧州の主な株式市場および株式指数に及ぼした影響を分析し、既に欧州市場に参入している主要MTF(Chi-X、Turquoise、BATSなど)のポジションを評価しています。また、欧州株式市場におけるダークプールの役割、取引所の機能に影響を与える各種規制についても論じています。
本レポートは40図と複数の表を含む全56ページで構成されています。