ボルカー・ルールが求める自己勘定取引の制限が市場の流動性におよぼす影響
2012/03/28
Implications for Market Liquidity
Abstract
オリバーワイマン既刊レポート
2010年7月に、ドッド・フランク法(金融規制改革および消費者保護に関する法律)第619条(通称「ボルカー・ルール」)が成立しました。ボルカー・ルールは、米銀による自己勘定取引を制限して米金融システムの安全性と健全性を確保することを目的に提案されました。同法の施行を担う5つの規制当局が発表したルール作りに関する正式な通知には、ボルカー・ルールの施行に向けた規制案が盛り込まれています。
ボルカー・ルールがもたらす最大の課題は、禁止される自己勘定取引と容認されるマーケットメイキング行為を区別することです。オリバー・ワイマンの調査レポート「ボルカー・ルールが求める自己勘定取引の制限が市場の流動性におよぼす影響」は、この課題の重要な側面、すなわち、ディーラーが顧客に提供するマーケットメイキング機能を直接または間接的に制限する制度の確立を提案する同ルールが、市場の流動性にもたらすリスクを検証しています。
その結果、この規制案が施行されれば、市場の流動性が大きなリスクにさらされかねないことがわかりました。米社債市場を例に、ボルカー・ルールに伴う過剰制限が実施された場合どのような影響が生じるかをシュミレーションしたところ、ディーラーの顧客サービス機能を縮小させることにより、投資家や発行体をはじめ経済全体の負担が大幅に増える、という結果となりました。また、他の資産クラスが直面する同様のリスクについても調査し、施行時期を迎えるにあたって規制当局が講じるべき対策を示しています。