リスク管理におけるビッグデータの潜在的可能性を実現するには
Abstract
セレントは、流動性リスクおよびオペレーショナル・リスクの管理にビッグデータの新たなテクノロジーを活用する際の視点や戦術上のアイデアを紹介します。
高度な分析や大量データを使ったリスク管理はこれまでも行われてきましたが、いわゆる「ビッグデータ」の登場により、金融機関は「従来と同じことをより大量により速く」行うのではなく、これまでとは違う方法でいかに行うかを再検討する必要に迫られています。
本レポートは、主に次の2つの疑問の答えを明らかにしています。
- 第1に、ビッグデータの考え方をリスク管理に取り入れる場合、リスク管理慣行にはどのような違いが生じるのか。
- 第2に、ビッグデータにパラダイム転換する場合、リスク管理機能はどの程度の付加価値をもたらし、業務部門にどの程度タイムリーに情報(マクロ経済リスク、流動性、オペレーショナル・リスク、評判リスク、カウンターパーティーなどに関するもの)を提供できるのか。
「ビッグデータに関しては、既に過大に喧伝され、大げさなイメージが膨らんでいるきらいがありますが、実際に画期的または圧倒的な成果を成し遂げた事例はいまだごく少数にとどまっています。ビッグデータの可能性は、単により多くのデータを使って同じ分析を行っても実現するものではありません。金融機関はリスクおよび財務管理、顧客業務におけるデータの利用方法をパラダイムシフトし、豊富な情報に基づく意思決定を促す必要があるでしょう」とセレント証券グループのリサーチディレクターでレポートを執筆したキュビラス・ディンは述べています。
ビッグデータをめぐる最大のビジネスチャンスが本格化するのはこれからですが、その前にやるべきことがあります。金融機関の多くは業務およびリスク管理を強化するためにはデータが重要になるとの認識は示しているものの、日常業務にそうした熱意が反映されているとは限りません。今こそリスクデータの戦略的な活用を真剣に検討し、口先だけの同意から脱却するとともに、自社の目標に合ったデータ利用を進めるべきでしょう。
ビッグデータの実態は、そのテクノロジーではなくデータの利用方法の変化に表れています。金融機関は業界内の喧伝に煽られるのではなく、データをいかに戦略的に利用すればリスク管理方法の改善につながるかを見極める必要があります。
本レポートでは、流動性リスクおよびオペレーショナル・リスクの管理に新たなテクノロジーを導入する際の視点や戦術的アイデアを紹介しています。これらのリスクの共通点は、システムの異質性の高さ、大量のデータ、急速に変化する情報フローなどにあり、いずれもビッグデータのパラダイムとテクノロジーの導入によって付加価値が見込まれる分野です。