レギュレーションNMS: 米国株式市場を一括する新ルール
Abstract
セレント・コミュニケーションズは、米国証券取引委員会(SEC)が提案した『レギュレーションNMS』が様々な証券市場参加者に及ぼす影響について検証しました。その結果、この規則変更案の施行によって最大の恩恵を受けるのは接続プロバイダーで、逆にしわ寄せを受けるのはニューヨーク証券取引所とブロックトレーディング・プラットフォームであることがわかりました。
SECはこの4月6日、米国株式市場の将来を巡って繰り広げられた1年3ヶ月に及ぶ議論にようやく終止符を打つ決断をしました。SECが先に提案した新規制『レギュレーションNMS』が、ごくわずかの差で承認可決されたのです。『レギュレーションNMS』は、1970年代に制定された全米市場システム(NMS)の規制構造の近代化を目指した一連の市場改革案で、これが施行されれば、証券取引所、電子証券取引ネットワーク(ECN)、代替的取引システム(ATS)、ブローカー、ディーラー、機関投資家、個人投資家、そしてこれら全てを接続するテクノロジーベンダーが影響を受けるでしょう。セレントは最新レポート「レギュレーションNMS:米国株式市場を一括する新ルール」で、これによって誰が恩恵を受け、誰がしわ寄せを受けるかを分析するとともに、今後の展開を予測しています。
レポートではまず、『レギュレーションNMS』の導入によってSECが解決しようとしている問題の概要を示しています。具体的には、市場アクセスの問題、不公正な規制およびシステム、市場データ配信システムの不透明性などについて論じています。次に、『レギュレーションNMS』に盛り込まれている4つの主要改革案について詳しく分析し、最終的に取引慣行がどのように変わっていくのか詳細な説明を加えました。さらに、こうした規制改革によって、取引所、ECN、ブロックトレーディング・プラットフォーム、フロントエンドシステム・プロバイダー、セルサイドおよびバイサイドの市場参加者、接続プロバイダー、市場データベンダーなどがそれぞれ受ける影響を検証しています。
セレントの見解では、『レギュレーションNMS』の施行によって最大の恩恵を受けるのは、エクストラネット、直接的な市場アクセス、FIXエンジンなどのベンダーである接続プロバイダーでしょう。市場の電子化や正式な統合が進めば、接続性が一段と重要になってくるからです。SECの狙いは、投資家に最大の利益をもたらすことですが、残念なことに現実にはそのような結果は望めないでしょう。一般小口投資家による株取引には特に変化は見られそうもなく、一方、一般機関投資家にとっては取引が煩雑となりそうです。
セレントの分析では、また、ニューヨーク証券取引所や一部の地方証券取引所のように取引の電子化が進んでいない取引所にとって、今後、状況の厳しさが増すことも予想しています。これらの取引所は、電子取引への切り替えを余儀なくされ、それが進まなければ取引停止に追い込まれるでしょう。一方、ECNや電子取引をすでに採用している取引所は、こうしたライバルの苦戦を尻目に『レギュレーションNMS』がもたらす恩恵を享受することになりそうです。
セレントの証券・投資プラクティスのシニアアナリストでこのレポートを執筆したジョディ・バーンズは次のように指摘しています。「結局のところ、『レギュレーションNMS』 が米国株式市場に及ぼす最大の影響は、立会場取引が過去のものになるということです。新規制の施行により、恩恵を受ける人とそうでない人が出てくることは事実ですが、株式市場全体としては、マニュアル取引と電子取引が混在する現状が終焉し、技術革新による恩恵が全面的に広がる中で、改革と近代化が実現していくでしょう。」
このレポートは4つの図を含む全30ページから構成されています。