2024年 損害保険会社向けビジネスプロセス・アウトソーシング (BPO)のグローバル市場分析:効率化とイノベーションの推進
Abstract
保険会社にとって、サードパーティ管理(TPA)とビジネスプロセス・アウトソーシング(BPO)はコスト削減、業務課題の解決、新たな成長機会の創出を実現するための手段となる。保険会社はコスト削減、アジリティの向上、デジタル機能の改善を通じて業務運営の効率化を図るため、アウトソーシングベンダーに目を向けている。本レポートでは、世界の生命保険会社向けアウトソーシング市場を独自の視点で分析し、業界を前進させるトレンドを明らかする。
保険のビジネスプロセス・アウトソーシング市場は、セレントが2011年に分析を始めてから大幅に拡大した。保険業務の複雑さが増すなか、各社はコストの維持または削減を目指しつつも、常に専門ノウハウやテクノロジースキルを探求している。多くの保険会社はスタッフの雇用やテクノロジーソリューションの開発・購入を行う代わりに、保険金請求手続き、保険契約管理、顧客サポートといった機能を第三者のサービスプロバイダーにアウトソースしている。損害保険会社はそのほか業務のデジタル化/自動化の支援、ベストプラクティスや新しいAI/アナリティクスツールの導入によるメリット、ピーク時の人員増強などを目的としたアウトソーシングも検討している。
BPOとTPAの最大の違いは、アウトソーシングプロバイダーが手掛ける業務の種類と利用するテクノロジーにある。BPOプロバイダーは基本的に取引処理により軸足を置き、全顧客共通のテクノロジーと割安な労働力を使うことで高い費用効果を提供する。一方、TPAプロバイダーは保険金査定などの判断集約型プロセスを、ベンダーまたは保険会社のプラットフォーム上で行うことが多い。TPAサービスには判断主導型のものもあり、保険金請求処理に関するサービスも多くケース含まれる。
表1:BPOとTPAのアウトソーシングモデル
アウトソーシングモデル |
詳細 |
従来型BPO |
主に非中核業務に導入され、安価な労働力の仲介や コスト削減を目的とする |
デジタル強化型BPO |
高スキル人材や幅広いテクノロジーツールの選択肢 を提供することで業務プロセス全体を包括的にサポート |
BpaaS (business process as a service) |
人、テクノロジー、インフラへのオンデマンド・アクセスを 提供することで、バリューチェーン全体のビジネスプロセ スを円滑にサポート |
従来型TPA (サード・パーティ・アドミニストレーター) |
プロセス管理に付随する財務リスクを想定しつつ、保険 会社のインフラ管理の専門領域を網羅したサービスを 提供 |
革新的なTPA |
最新の保険契約管理システムを利用して、保険業務管理 の専門領域を網羅したサービスを提供 |
出所: Celent
本レポートで世界の損害保険会社向けビジネスプロセス・アウトソーシング(BPO)市場について論じるにあたり、セレントはBPOサービスのプロバイダーへの取材をもとに保険の中核サービスにおけるBPOの導入状況を分析した。世界の保険分野におけるBPO導入の進展状況を把握するため、保険会社向けBPOサービスを提供している100社近くのプロバイダーに調査への参加を依頼した。その結果、14のベンダーから計567の保険会社への導入事例について回答を得た。
世界展開する生命保険会社への導入事例は11のプロバイダーによる366件だった。その中には、セレントが保険会社向けBPOプロバイダーとしてトップクラスと認識するプレーヤーの大部分が含まれている。さらにセレントは、有力ベンダーに計12回の定性的なフォローアップ取材を行い、原データから導き出された結果を検証した。