米国の医療費請求決済処理サービス (ヘルスケア・バンキングサービス): 金融機関にとっての展望
Abstract
金融機関とサードパーティの処理業者が医療機関の収益サイクルの有効な自動化と例外処理の効率化を実現できれば、医療サービスの運営コストを年間500億米ドル(約6兆円)程度削減することも可能となるでしょう。
医療費関連取引の処理は非常に複雑であり、多数のステークホルダーの関与、多様な取引形態、手作業やペーパーベースプロセスの多用に伴う非効率性といった特徴があります。このような取引件数の多さと、複雑さだけを見ても、金融機関にとって、ビジネスチャンスを見込める市場です。一方、医療費の請求側と支払い側との間の取引件数は膨大な数に上り、2006年の支払い請求件数は約34億件で、支払い件数は約11億件に達しています(ちなみに同年の企業間取引件数は93億件)。
今回新たに医療費請求決済処理サービス(ヘルスケア・バンキングサービス)分野のリサーチとして発行した初のレポート「米国の医療費請求決済処理サービス(ヘルスケア・バンキングサービス):金融機関にとっての展望」は、医療費請求決済処理の複雑さと、この市場における金融機関のビジネスチャンスについて論じています。この分野で成功を収めている金融機関は取引処理だけではなく、医療費請求側、支払い側双方との関係強化を通じて融資の分野でも利益を確保できる体制を築いています。
これまで、医療セクターは自動化が遅れ、取引基準の順守が不徹底であることなどから、金融機関にとっては魅力に欠ける市場と思われてきましたが、ここにきて見通しの明るさが増しています。電子取引処理が普及し、金融機関とそれ以外の競合プレイヤーがマインドシェアと市場シェアの両方で獲得競争を繰り広げています。
「専任の人材、確かな専門知識、高度なサービス、規模を備えた金融機関のみ競争に勝つことができるでしょう。医療関連分野にすでに進出、または進出を目指す金融機関は、収益サイクルに適合した付加価値あるサービスを提供し、例外処理において重要な役割を果たしうることを証明する必要があります」と、セレント銀行プラクティスのマネージング・ディレクターでレポートの共同執筆者のアレンカ・グリリッシュは述べています。
金融機関はこのマーケットになにも単独で乗り込む訳ではありません。 「マーケットリーダーとなるべき金融機関は、より革新的な外部のベンダーや決済機関との提携、買収を進め、そのテクノロジーを既存のロックボックス口座、キャッシュ管理、財務商品と連携させることによって、サービスの拡充を図るでしょう」と、レポートの共同執筆者でシニアアナリストのマダビ・マンサは付け加えています。
レポートでは、大手金融機関(ABNアムロ、バンク・オブ・アメリカ、コマース・バンク、Fifth Third Bank、JPモルガン・チェース、KeyCorp、メロン、PNC、ワコビア)が進めているヘルスケア・バンキングサービスのプロジェクトを紹介しています。
本レポートは16図と4表を含む全40ページで構成されています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2007年5月31日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。