ATM:トータル保有コスト削減に向けた戦略
Abstract
セレントの予測では、米国の金融機関が店舗内外に設置している全てのATMの運用コスト(資産減価償却費を含む)は2005年には計33億米ドル(約3,700億円)を超え、2008年にはさらに39億米ドル(約4,400億円)に達する見通しです。
米国のATM市場は急速な転換期を迎えています。ここ数年でATMを通じた取引総額、設置件数共に飛躍的に増加し、今や市場は成熟期に入りつつあります。コンプライアンスやテクノロジー上などの様々な課題に起因して、ATM業界は、加速度的に変化してきました。ここにきて銀行は、成熟期を迎えたチャネルのトータル保有コスト(TCO)削減に向けた新たな対策を迫られています。ATMの利用料収入が減少する中、金融機関はこの重要なリテールチャネルに対してより慎重な見方をするようになっています。利用料の減収と老朽化するインフラのアップグレードに必要な大規模投資という相反する圧力に直面して、銀行はATMビジネスの新たな運営戦略を模索しているのです。
セレントは最新レポート「ATM:トータル保有コストの削減に向けた戦略」において、ATM運営の主要トレンドになると見られる2つのフレームワークについて検証しています。第一に、コスト削減、コストの確定、サービスの一貫性を狙って、銀行がATM運営業務のかなりの部分をアウトソーシングするというトレンドです。ATMチャネルは一段とコモディティ化が進み、顧客が利用する機能(依然としてほとんどが現金の払い戻し)で金融機関が差別化を図れる余地は限られてきています。一方で、よりオープンな標準をベースとするATMテクノロジーへの移行が進み、ATMの保有と運営が分離していく方向に一層拍車がかかっています。レポートでは、ATM事業の全プロセスのアウトソースに踏み切ったTD Bank Financial Groupの詳細なケーススタディを通して、アウトソーシングのトレンドを解説しています。
もう一つのフレームワークは、金融機関がサードパーティのATMに自社のブランドを冠するというトレンドです。リテール向けの好立地に拠点を設け、顧客利便性の向上を目指す銀行にとって、既存ATMの自社ブランド化は、これを手っ取り早くかつコスト効率良く実現させる方法と言えます。2008年まで、銀行による店舗外ATMの自社ブランド化は急速に進むでしょう。
セレントのシニアアナリストでこのレポートの執筆者であるマダビ・マンサは次のようにコメントしています。「ATMのアウトソーシングプロバイダーが今後も業務規模を拡大し、運営能力を向上させていけば、ATM事業の減収とコスト増に悩む銀行にとって、アウトソーシングとブランディングというふたつのフレームワークがもたらす収益への影響は一層欠かせないものとなるでしょう」
このレポートは9図と5表を含む全31ページで構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年7月29日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。