ヘッジファンド業界の課題と革新
Abstract
ヘッジファンド業界は信用危機から少しずつ脱しつつあり、新たなビジネス機会に目を向けています。アルファとベータの二分化やヘッジファンドに対する機関投資家の投資意欲を背景に、ヘッジファンド業界では構造上および業務上の基盤が大幅に変化しつつあります。
信用危機の副産物は、ヘッジファンド業界に潜んでいる弱点をあぶり出しただけでなく、こうした環境下でも巧みな舵取りによって市場や競合相手をはるかに上 回るパフォーマンスを上げられるファンドがあることを浮き彫りにしました。対応力の高いヘッジファンド業界は徐々に信用危機から脱しつつありますが、構造上の様々な問題は未解決のままです。セレントの最新レポート「ヘッジファンド業界の課題と革新」はこれらの問題を検証し、業界がどのような対応をとるべきかを現実的な視点から提言しています。
昨今の様々な動きは、いずれも大型ヘッジファンドの組織化が進んでいることを示しています。ヘッジファンドの顧客基盤に占める機関投資家の割合は拡大し続 けており、年金ファンドも業界への参入を加速させています。こうした投資家のニーズに応えるため、ヘッジファンドはさらに成熟したビジネスモデルを開発してきました。
最大規模のヘッジファンドに資産が集中している背景には、資金源の変化があります。基金や超富裕層個人といった「小口資金」は、実績のあるポートフォリオ マネジャーが立ち上げた、通常を上回るリターンが見込まれる著名なブティックファンドに流入しています。一方、年金ファンドの新規投資は、より成熟した管理体制とコンプライアンス部門を持つ大規模な有力ファンドに向かっています。
それと同時に、アルファの追求をめぐる競争も激化しています。ヘッジファンド業界にとっては、コモディティ化のわなに陥らないようにすることが最大の課題 の1つとなっています。そのため、ヘッジファンドは融資事業への参入を活発化させているほか、混合型商品の開発や処理能力が大きくレイテンシの少ない高性 能オーダー・ルーティング・システムの構築を進めることにより、流動性への迅速なアクセス、市場インパクトの軽減、取引のスピード化とコスト削減を目指しています。
「大型ヘッジファンドのリスク管理と業務インフラは飛躍的に改善しています。多くの場合、これらの能力は金融業界のベストプラクティスに近づきつつあります。実際、一部の大型ヘッジファンドの組織は、伝統的な資産運用会社により近い形へと徐々に変化しつつあります」と、セレント証券プラクティスのアナリストでレポートの共同執筆者であるイザベル・シャウエルテは述べています。
本レポートは10図と4表を含む全44ページで構成されています。