米国マス富裕層におけるビジネスチャンス
2008/06/10
イザベラ・フォンセカ
Abstract
金融機関にとって、マス富裕層の顧客セグメントは競争力と収益を向上するための絶好のビジネスチャンスを提供しています。
セレントとオリバー・ワイマンが発行する最新レポート「米国マス富裕層におけるビジネスチャンス」 は米国のマス富裕層市場の顧客セグメント、金融商品・サービス、販売チャネルについて分析するとともに、銀行、ウェルスマネジメント、保険の分野でこれら の顧客をいかに獲得すべきかを論じています。レポートは、オリバー・ワイマンの調査データに基づいてセレントのアナリストが執筆したものです。
マス富裕層とは保有資産総額が25~200万米ドル(約2600万~2億円)の顧客セグメントで、以下のような特徴があります。
- 米国の総世帯の31%、富裕層世帯の92%を占める。
- 米世帯の資産総額の47%、富裕層世帯の資産総額の57%を占める。
- 融資および保険商品を販売する上で最もリスクの低いセグメントである。
- セグメントに特化した商品や販売チャネルという点で、最も開拓が遅れているセグメントである。
金融機関がこの市場で支配的な地位を得るためには、次の点に取り組む必要がある。 - マス富裕層の要望を反映し、かつ金融機関に高収益をもたらす有効な価値提案を開発する。
- マス富裕層にアピールする強力なブランドを構築する。その際には、富裕層や超富裕層と同一視するのではなく、このセグメント独自の取り扱いをする必要がある。
- マス富裕層の希望や懸念に応えるようなマーケティングメッセージを打ち出す。ただし、恩着せがましいメッセージ、このセグメントがまだ手に入れていないラ イフスタイルや富を謳ったもの、または彼らが抜け出したマス市場と一括りにするようなものは避けるべきである。
- マス富裕層世帯特有のニーズに対応した商品・サービスを網羅したメニューを用意する。
- マス富裕層が時間を無駄にしなくて済み、金融機関側ではなく顧客側の利便性にあったアクセス方法や情報を提供できる有効な販売チャネルを構築する。
- 規模の大きいマス富裕層セグメント向けに高水準のサービスを提供するために最適なテクノロジーを開発する。最適コストモデルを確立するためにはテクノロジーと販売チャネルの活用が不可欠となる。
「驚くべきことに、マス富裕層をめぐるビジネスチャンスは、金融機関がこのセグメントをターゲットとして捉え始めた20年前と変わらず依然として手付かず の状況にあります。現時点では、どの金融機関もこのセグメントの顧客を取り込むことに成功していません」とセレントのウェルスマネジメント・グループのシ ニアバイスプレジデントでレポートの共同執筆者であるロバート・エリスは指摘しています。
「金融機関が商品、チャネル、ブランド、サイロ化していない顧客中心主義のマーケティングを完全な形で提供してはじめて、高収益の期待できるマス富裕層の獲得が可能となるでしょう」とシニアアナリストで共同執筆者のイザベラ・フォンセカは付け加えています。
本レポートは、マス富裕層セグメントの取り込みを目指す金融機関の指針となるものです。同セグメントをターゲットとする既存のモデルに加え、銀行/ウェルスマネジメント/保険に焦点を当てた新しいモデルについても取り上げています。
全36ページのレポートには16図と3表を掲載しています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2008年5月30日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。