バイオメトリクステクノロジー:米国での実用化はまだ先か
Abstract
バイオメトリクスは極めて有望な技術ですが、米国の銀行が十分にそのメリットを生かせるようになるのは10年以上先になるかもしれません。
銀行業界では、バイオメトリクステクノロジーの採用が広まりつつあります。世界中の銀行が、詐欺・不正の抑制やカード/暗証番号に代わる手軽で便利な選択肢を顧客に提供することを目的に、バイオメトリクスの採用を進めています。しかし、米国の銀行はこの動きに遅れをとっています。
「米銀が、指紋や瞳の虹彩などによるバイオメトリクスを公開決済ネットワークに導入し、消費者に決済サービスを提供できるようになるには、あと10年程度かかるでしょう」と、セレントのシニアアナリストで最新レポート「バイオメトリクステクノロジー:実用化はまだ先か」を執筆したアリアナ・ミシェル・ムーアは語っています。
セレントはこのレポートで、金融サービス業界におけるバイオメトリクスの利用状況について、銀行向けアプリケーションの開発状況と同技術の採用に向けた銀行の準備体制に焦点を当てて調査しました。その結果、テクノロジーの進化と価格面の改善などを背景に、バイオメトリクスは銀行にとって有用なツールと位置づけられるようになったものの、米銀はバイオメトリクスの標準アプリケーションの開発から顧客の利用促進の面に及ぶ複数の課題に直面していることがわかりました。これらの課題は、米国におけるバイオメトリクスの利用拡大を遅らせる要因となるでしょう。
「顧客を対象にバイオメトリクスの導入を検討している銀行が課題に直面する一方、多くの銀行が行内向けアプリケーション(行員の経歴チェック、勤務時間・出勤記録、アクセス・セキュリティーなど)にバイオメトリクスを導入しています。バイオメトリクスの利用機会は想像以上に多く、その用途のアイディアはどこまでも広がります」とムーアは述べています。市場ではすでに様々なタイプのテクノロジーがテストされており、中には「体臭」を利用した珍しいものもあります。その中から真に有力な技術として浮上しているのが、指紋認証や虹彩認証などの方法です。セレントは、こうした技術の進化の過程を追跡し、既存のテクノロジーを比較した上で、バイオメトリクスの今後の展開を予想します。
また、今後は個人の領域でもバイオメトリクステクノロジーの導入が進み、それがリテールバンキング業界全体への利用拡大に道を開くでしょう。携帯電話、ラップトップ、コインロッカーをはじめ、多様なタイプのアプリケーションにバイオメトリクスが導入されれば、こうした技術に対する消費者の認知度が高まり、使いやすさの点でも向上するはずです。
レポートには、生体認証技術販売業者2社(BiopayとPay by Touch)のケーススタディを掲載しています。尚、本レポートは、2002年3月発行の日本語レポート「金融詐欺:迎え撃つバイオメトリクステクノロジー」の内容をアップデートしたものです。
このレポートは全52ページで構成されています。