資産運用会社向けトレーディングシステムの トレンド
Abstract
(このレポートは2006年9月20日に"Trends in Asset Management Trading Technology"というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2007年8月20日に発行しました。)
資産運用会社やヘッジファンドは、新たな進化を遂げたトレーディング環境への対応に取り組んでいます。
この5年間にわたってフロントオフィスのトレーディング環境で示された変遷とは ― 日常のワークフローの自動化から高度なアルゴリズムトレーディングへというテクノロジーの高度化、蒸気機関車から新幹線並みへのスピードアップ、電話を操るトレーダーから電子取引の達人へという変化等です。注文執行管理システムの最新の改良点は、トレーダーのデスクトップの再構築で、より多くのツールやオプションが加えられたことです。海外からのベンダーの参入や新製品の投入もあって、選択肢の豊富な状況は続いています。資産運用会社にとって、自立性を維持することは極めて重要であり、待ち望んできたことだけに、現在の状況は非常に素晴らしいものです。一方、資産運用会社にとってマイナスにつながりそうな面としては、システムの多様化、トレーディングデスクに求められるスキルの変化、市場構造や規制を巡る環境の急速な変化などが挙げられます。
資産運用会社のITおよびトレーディング部門には、近々や将来のニーズをめぐる問題が生じています。セレントの最新レポート「資産運用会社向けトレーディングシステムのトレンド」では、①複数のトレーディングシステムは引き続き必要か、あるいはシステム統合は可能か、②OMSは必要か、EMSは必要か、または両方とも必要なのか、③既存のトレーディングシステムベンダーは、最新機能を実装できているのか、④複数の資産クラスを扱う自社の投資戦略や組織構造により合致する最新システムが、市場に存在するのではないか、⑤既存のベンダー契約は、現行の市場価格からみて適正か、といった問題を提起しています。
このような変化にもかかわらず、今後数年間は、全世界の資産運用会社によるシステム投資額の拡大ペースは鈍化する見通しです。価格は下落傾向にあり、市場には飽和感も見え始めています。幅広いシステムの投入や価格の多様化は好ましい状況ではありますが、ベンダー側クライアント側双方で統合・再編の動きが続くでしょう。全世界の資産運用会社によるトレーディングシステムへの投資額は、2006年の6億3,400万米ドル(約744億円)から2010年には7億5,700万米ドル(約888億円)に増加する(年平均伸び率は4.6%)見通しです。
「先進的なシステムベンダーが、より大きな市場シェアを獲得していくでしょう。運用会社が、コストや提携先ベンダー数の削減を図る一方で、最新機能搭載に資本投下しようとしているからです。また、米国の運用会社は、ベンダーの再編や、トレーディングデスクの合理化に配慮した新製品の投入を追い風にしたいところでしょう」と、セレント証券プラクティスのシニアアナリストでレポートの執筆者であるデニース・バレンタインは語っています。「欧州およびアジア諸国では、取引市場が集中し、大口注文が主体でありながら、全体に自動化が進んでいないため、トレーディングデスクの機能は幾分簡略化しています。とはいえ、アルゴリズムプログラム、ダイレクトマーケットアクセス、分析ツールなどが重視されている点に変りはなく、こうしたシステムに対する関心も高まりつつあります。トレーディングシステムを巡るインフラ革新の次の波は、おそらくこれらの市場から発生するでしょう。」
本レポートでは、トレーディングシステムのトレンドとともに、資産運用会社のフロントオフィスシステムの典型的な枠組みを紹介しています。また、多数のシステムベンダーを取り上げて、有力プロバイダーとその製品を提示しています。
本レポートは5図と7表を含む全36ページで構成されています。