スワップ執行ファシリティ:初期経験からの教訓
Abstract
スワップ執行ファシリティの導入はOTCデリバティブ市場に改革をもたらしました。同市場では相対取引から多対多取引へと取引環境の移行が進行しつつあり、金融機関は規模の大小にかかわらず流動性にアクセスしやすくなっています。
セレントの最新レポート「スワップ執行ファシリティ:初期経験からの教訓」は、新たな市場環境を①主要SEFのここ数ヵ月間の取引高と②多対多取引用プラットフォームへの移行がもたらす市場構造の変化―という2つの側面から評価しています。
OTCデリバティブ市場で多対多取引が行われるようになってまだ日が浅いとはいえ、流動性がどこに存在するかに加え、既存のプラットフォームが持つ優位性も明らかになっています。
透明性の向上は市場全体にメリットをもたらす一方、バイサイドの金融機関は受託者として顧客取引の守秘義務を負うことになるため、業務上の課題は増すことになります。また、注文執行のベストプラクティスも変化するでしょう。金融機関の間では、望ましいポートフォリオの組み合わせに応じて、ニ者および多当事者間のOTCデリバティブ取引または取引所経由のデリバティブ取引の執行場所を判断するようになるでしょう。
「多対多取引用プラットフォームへの移行は競争の激化を招き、OTCデリバティブ取引の価格下落とスプレッドの縮小につながるとみられます。ただし、金融機関は引き続き規制およびインフラ要件への対応を余儀なくされるため、今後数年間は取引コストの上昇が予想されることも指摘しておきたいと思います」と、セレント証券グループのシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。
レポートではまず、主なスワップ執行ファシリティの取引高をもとに市場の概要を示しています。また、今回の変化がOTCデリバティブ市場の流動性、価格設定、市場構造に及ぼす影響についても論じています。